イギリス芸能界でも「性加害」の過去――ジャニー喜多川前社長同様“加害者の死亡後”明るみに 捜査した元警察官が語る“日本への提言”
■再発防止への取り組み…日本への提言は?
――このような事件が再び起こらないようにするためには、どのような対策を取るべきだと思いますか? 私たちは、弱い立場の人々を保護するために、多くの措置を講じています。さまざまな組織が、まず適切な人材を採用し、より安全な採用方針を定める必要があります。 子どもたちから信頼される立場にある人は、採用される際に、犯罪行動に関する情報が警察のシステムに保管されていないかどうかをチェックされなければなりません。面接も経て、何が正しくて何が間違っているかについての理解について、具体的な質問がなされます。 また、それぞれの組織には行動規範があると思いますが、人々が何か悪いことを発見したときに声を上げることができるよう、通報する仕組みが必要です。そのような事例が明るみに出た場合、理想的には各組織に保護責任者がいるはずで、彼らが、警察などと協力し、少しでも一線を越えれば解雇されることを組織の他のメンバーに認識させるために、しっかりとした懲戒処分などの措置を講じる必要があります。 サビル氏の件に関連することですが、取り組みから得られた重要な教訓の1つは、「早期に介入する仕組みを持つこと」でした。何か懸念がある場合に、他者から非難されることなく通報できるシステムです。早期の通報や早期の介入があれば、サビル氏のような虐待を止めることができると思います。 ――日本でも、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長をめぐって「性加害」の問題が取り沙汰されています。イギリス警察の元司令官として、日本の警察に何かメッセージはありますか? この事件を真剣に受け止めてください。彼が死んだから、起訴という刑事司法の結果が得られないということに焦点を当てないでください。社会正義の観点から考えてほしいです。 そして、彼がどのように活動していたかを捜査することによって、日本の被害者への信頼を築き、彼らが名乗り出るようにし、何が起こったのかについて発言し、話す場を与えることができるようにしてほしいと思います。 多くの場合、被害者は警察を信用しない傾向にあります。被害者を安心させる必要があるのなら、支援団体と協力し、他に相談できる人がいることを伝えて、被害者がさまざまな経路で通報できる体制をつくるべきだと思います。