“低所得者”ほど高血圧・肥満が多く、日本で広がる「健康格差」東京医科歯科大学ら
東京医科歯科大学らの研究グループは、所得などによって健康に違いが出る「健康格差」が日本人の高血圧に存在し、その格差が拡大傾向にあることを発表しました。このニュースについて中路医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
研究グループが発表した内容とは?
編集部: 東京医科歯科大学らの研究グループが発表した内容について教えてください。 中路先生: 今回紹介するのは東京医科歯科大学らの研究グループが発表した内容で、研究成果は学会誌「Hypertension Research」に掲載されています。 研究グループの解析対象となったのは、男性が延べ6868万4025人で平均年齢54.7歳、女性は延べ5911万8221人で平均年齢は56.7歳でした。高血圧の有病率は、高所得者層よりも低所得者層の方が高いという健康格差が認められたとのことです。 ま た、健康格差は年を経るにつれて増加する傾向がみられたそうです。さらに、所得が低いほど不健康な行動や肥満が多い傾向にあったこともわかりました。ただし女性に関しては、所得が高いほど喫煙や飲酒が多いというデータも得られました。 今回の研究結果について、研究グループは「健康格差は様々な環境により生じており、自己責任で解消するものではないことが知られています。 そのため、肥満予防や禁煙の健康教育といった方法の効果は低く、むしろ経済的に豊かで余裕がある人の健康だけを改善して、貧しい人の改善には寄与しないことが多いのです。 職場での健康的な食事の提供や、禁煙や禁酒につながる税制、運動する余裕ができる勤務時間など、人々を取り巻く環境へのアプローチが大切です」とコメントしています。
健康格差とは?
編集部: 今回の研究で取り上げられた、健康格差について教えてください。 中路先生: 健康格差とは、所得などによる健康の違いのことです。この健康格差を解消することは、国の政策である「健康日本21」の中で、健康寿命を延ばすことと並んで基本的な方向の1番目に位置づけられています。 健康格差が生まれる代表的な理由は3つあります。まず、社会的格差です。社会的格差は、所得の違いなどの経済状態や学歴などの教育環境の違いなどです。 次に労働による格差です。これは、職種や雇用形態などの違いによって生まれる格差となります。最後が、家族構成や地域環境による格差です。これらの健康格差は、国が推し進める健康寿命 の延伸についても関係があり、格差是正が求められています。