いすゞの商用車向けバッテリー交換式ソリューション「EVision Cycle Concept」が初公開、バッテリー4個を7分40秒で交換
いすゞ藤沢工場の一角に設置された「EVision Cycle Concept」
いすゞ自動車は藤沢工場(神奈川県藤沢市)にて、かねてより開発を進めていたバッテリー交換式ソリューション「EVision Cycle Concept」の社内実証実験を開始したと10月31日に発表。その実験の模様を11月6日、報道関係者に公開した。 脱炭素社会の実現に向けた□いすゞ環境長期ビジョン2050□に基づく EVision Cycle Conceptは、カーボンニュートラル(CN)の新たな選択肢として、いすゞが事業化へ向けて準備を進めてきたバッテリー交換式ソリューションだ。昨年の「ジャパンモビリティショー2023」では、車両片側のバッテリー交換装置を公開しているが、今回のプロトタイプはそれを改良して両側から交換可能としたものになる。 そもそもバッテリーEV(BEV)の普及に際しては、充電時間の短縮や車両価格の低減、バッテリーの再利用といった課題を解決することが欠かせない。いすゞとしてはこの課題を、車両からバッテリーを分離して交換方式にするEVision Cycle Conceptによって解決し、それが車両価格の抑制と施設側の充電時間の集中回避につながっていくとしている。 この開発の前提として、いすゞでは2020年3月に□いすゞ環境長期ビジョン2050□を発表済みだ。ここでは脱炭素社会の実現に向け、いすゞとして目指すべき方向性や、その具体的な取り組みとして「気候変動対策」「資源循環推進」「環境リスク予防/対策」「生物多様性保全」の環境4重点課題を掲げ、その実現のために□2030環境ロードマップ□を策定。その対応に総額1兆円規模の研究開発・設備投資・事業投資を行うとした。 カーボンニュートラル実現のために、いすゞはマルチパスウェイの方法を採る 今回、公開されたEVision Cycle Conceptは、その具体的なアプローチの一環となる。 車両の位置合わせも含め、バッテリー交換に必要なすべてを自動化 そのバッテリー交換ステーション(プロトタイプ)は、いすゞにとって国内最大の生産工場となる藤沢工場の一角に準備されていた。ステーションには左右に交換バッテリーを7つ置いたコンテナが配置されており、この中央に車両が乗り入れて両側からバッテリーを交換する仕組みだ。また、ステーションの屋根には太陽光パネルが設置され、ステーションを運用する上での電力支援にも役立っているという。 ステーションには2個のバッテリーを搭載する車両も用意されたが、この日のデモでは、4個のバッテリー搭載車を使って交換作業が行われた。順を追ってその様子を説明しよう。 バッテリーを交換するにはまず、このステーション内に車両を乗り入れるところから始まる。洗車機にあるような「前進してください」の案内に従って進み、指定位置で車両を止める。この時、ドライバーはおおよその位置で停止すればいい。これはステーション側に車両の位置を自動補正する機能を備えていることから可能となった。 そして、バッテリー交換の作業をスタートさせると、左右のコンテナのシャッターが開き、続いて車両の位置合わせがウィーンという油圧音と共に自動的に行われた。この位置合わせはステーションと車両を並行にすることで、バッテリー交換がスムーズに行われることを目的としている。 ステーション内の指定位置に入った車両は、円内の補正装置によってシステムと並行になるよう自動調整される 車両の位置合わせが終わると、次にステーション側はカメラを使ってバッテリー位置を把握。これと同時に車両側はバッテリーを外すためのロック解除を行い、これでバッテリーを取り出す準備は整った。 4個のバッテリー交換に要した時間はわずか7分40秒 続いて左右のコンテナからバッテリーを取り出すためのアームが現れ、ここからバッテリー2個の抜き取り作業に入っていく。抜き取られたバッテリーは、一旦コンテナ側に引き取られた後、180度回転してラックに収められ、充電するためのコネクタにも自動的に接続して最初の2個についての作業は終了。これを残り2個のバッテリーに対しても同じように繰り返す。
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レスポンス 会田肇