『おむすび』はなぜ平成×ギャル×震災を題材に? “朝ドラファン”宇佐川CPが込めた思い
橋本環奈だからこそのヒロインとオーディションへの思い
――朝ドラヒロインの定番ともいえる“水落ち”は、第1話から登場しました。 宇佐川:あまりに唐突に来るので思わず笑ってしまうかもしれませんが、これから朝ドラというものを橋本環奈さんが担っていくにあたり、「私たちが物語を作っていくならば、きっとどこかに入れるだろう」と。であれば、もう一番最初に観てもらおうじゃないか、という思いがありました(笑)。「人を助ける」というのは物語とちょうどリンクするテーマでもあったので、初回に入れさせてもらった、というかたちです。「水落ちをさせたくて入れただろ」と言われたらその通りなんですが(笑)、ツッコミどころも含めて、これまで朝ドラをご覧になってきた方にも楽しんでいただけたらと思っています。 ――今回ヒロインのキャスティングは、オーディションではなくオファーによるものだそうですね。 宇佐川:「朝ドラといえばオーディションだな」と私もずっと思っていたんですが、今回は序盤から震災を描くことを決めていたので、「今の時代に震災をどう自分事として捉えることができるか」「先人の方が味わった気持ちや困難をどれだけ未来に活かせるのか」を考えていました。その思いをヒロインに託したときに、新人の方がそれを受け止めながらやっていけるのか、という懸念があって。その上で「元気を届けたい」と考えたときに、やはり主人公と家族に関しては、しっかりとしたキャスティングでいこうと。一方で、有名無名関係なくオーディションしたいという思いもあったので、ギャルや男子高校生のオーディションで、朝ドライズムを継承しています。ギャルオーディションは通常のヒロインオーディションと同じ規模でやっているので、そこでまた、みなさんには新しい人材を見つけてもらえたらいいなと思っています。 ――放送開始前には、橋本環奈さんのギャル姿も話題になりました。 宇佐川:最初に出したのは一番インパクトがある特別なシーンのビジュアルで、あえて派手なメイクをしているんです。なので、実際に本人がギャルマインドを持った後のビジュアルは、時代に即したものになっています。もっとも意識したのは、ギャルにも時代によってグラデーションがあること。平成だからと一色にするのではなく、コギャル、ガングロ、白ギャル、黒ギャルなど、時代に即したものをちゃんと描かなければいけないと。実は1年半ほど前に『egg』さんなどに取材をして、50ページくらいのギャル史を作りました。80年代から始まっているんですが、「ギャル」という言葉の起源から勉強して、大真面目に、もう学術的くらいの勢いで(笑)。その中で、今回いわゆる90年代のコギャルといった私たちがイメージするギャルは、姉役の仲里依紗さんに託しています。ちなみに考証はルミリンゴさんという伝説のパラパラギャルだった方にお願いしていて、おそらくこれ以上の方はいないだろうと思っています。 ――主題歌はB’zが担当していますが、楽曲制作に際して宇佐川さんからリクエストされたことはありますか? 宇佐川:B’zさんには「今、大変だろうけど、頑張ってみようよ」といったメッセージ性のある曲があって、それを聴きながら企画書を書いていました。これこそギャルマインドであり、私たちがドラマの中で伝えたいことだと思っていたので、曲を聴きながら「この物語を作るぞ!」と自分を奮い立たせていた記憶があります。B’zさんには『ultra soul』のようなかっこいい曲だけでなく、私が聴いていた曲や『Easy Come, Easy Go!』のような「日々を過ごすって簡単ではないけれど、みんなで一緒に楽しんでいこうよ」とポンッと肩を押してくれる名曲もたくさんあるので、そういう曲を求めていますと伝えました。「今回の朝ドラにはB’zさんの曲が非常にふさわしいんじゃないか」と、暑苦しい感じで手紙を書きましたね(笑)。 ――朝ドラ主題歌ということに対するリアクションはいかがでしたか? 宇佐川:ものすごく喜んでいらっしゃったそうです。私もびっくりしましたし、本当に運がよかったなと思いますね。「朝ドラの主題歌なんて光栄だ」とおっしゃっていただけたそうで、これまでの朝ドラを作ってきてくれたスタッフにも、本当に感謝しました。 ――最後に、序盤の必見ポイントを教えてください。 宇佐川:序盤はギャル軍団に巻き込まれる主人公と、ギャル軍団の推進力。それから食の魅力と、やっぱり家族のやり取りの面白さですね。今ではフィクションを超えた家族像みたいなものが、裏でも表でも出てきています。第4週にパラパラのショーがあるので、そこまでは青春物語として、ハチャメチャに元気で、王道なギャルや家族のパワーを届けたいと思っています。このドラマは主人公が栄養士を目指す物語ですが、栄養士になるための逆算では作っていなくて。何十人という栄養士の方に話を聞いて、リアルな話の進め方にしているので、糸島の食だったり、経験がきっかけになっていくところも楽しんでいただきたいです。 ――恋愛展開にも期待していいのでしょうか? 宇佐川:十分に期待していてください! 私は朝ドラが大好きで、朝ドラに恋い焦がれているところがありますので(笑)。いろんなタイプの男性が出てくるので、楽しみにしていただけたらと思います。
石井達也