白石康次郎、変わらないのは『情熱に真っすぐ』…「御恩と奉公」をテーマに過酷なヨットレースに再び挑む
「地球上最大のコースを最小の単位でやるわけで、自分を試せる最大のもの。偉人って人質になっているでしょ。源頼朝、徳川家康。西郷隆盛や吉田松陰も獄舎に入っている。自分を見つめ、向き合う。1人の環境が必要なこともある。だから、僕にとって海の上にいる時間は大切。自分に勝る先生はいない。禅で『自灯明』という言葉がある。『自らの灯りに従って生きなさい。他人の灯りに頼って生きるな』ってこと」 26歳で単独無寄港無補給での世界一周を当時の史上最年少記録で達成。57歳になり、10日から世界5周目のスタートを切る。今大会では、たったひとりの海上から何を思うのだろうか。サムライ・セーラーは「成功は目的ではない」と言葉に熱を込めた。 「世界一周は7回やって4回しか成功してない。3回失敗している。毎回、どうなるか分からない。それでも挑み続ける。『成功したい』なんて一度も言ったことないでしょ? 好きなことをやるんだから、そこには成功も失敗もある。そんなことはどうでもいいの。変わらないのは『情熱に真っすぐ』かな」 ▼白石康次郎(しらいし・こうじろう) 1967年5月8日生まれ、神奈川県鎌倉市出身の57歳。94年にヨットによる単独無寄港無補給での世界一周を当時の史上最年少記録だった26歳で達成。2002~03年に単独世界一周レース「アラウンド・アローン」クラスⅡで4位。06年には同「ファイブ・オーシャンズ」クラスⅠで2位。16年に「バンデ・グローブ」初出場もリタイア。20年大会はアジア勢初となる完走で16位。趣味はドライバーの最高飛距離383ヤードを誇るゴルフ。 ◆バンデ・グローブ フランスの「レ・サーブル・ドロンヌ」を発着点に、単独無寄港無補給で世界一周(約4万5000キロ)のタイムを競うレース。4年に一度、開催される。1989年から2020年まで計9回大会で延べ200人が出場し、完走者は延べ114人。宇宙を経験した人数よりも少ないといい、世界一過酷なレースとして知られる。最速記録は16年大会優勝のアーメル・ルクレッシュの74日3時間35分46秒。今大会は40人が参加予定で白石は2番目の年長となる。
中日スポーツ