【職場体験の中学生】地域で成長後押しを(6月4日)
福島市の中学2年生が企業などで仕事を体験する「中学生ドリームアップ事業」が今月始まる。今年度は市立19校の約2千人が主に学校近くの事業所を訪れ、最長5日間にわたって活動する。進路を考え始める時期の職業経験は貴重だ。受け入れに協力する事業所は延べ600カ所を超える。福島県の次代の担い手を地域で育てる機運も高めていきたい。 事業は2001(平成13)年度、「地域に学ぶ中学生体験活動事業」として市教委が始めた。2006年にキャリア教育文部科学大臣表彰を受けている。同様の取り組みは県内各地に広がっている。新型コロナ禍で2020(令和2)年度から3年間の中止を経て昨年度、4年ぶりに再開した。 生徒は農家や小売店、飲食店、医療・福祉施設、報道機関、国や県の出先機関、幼稚園、学校など希望する体験先に自宅から直接通う。各職場で手ほどきを受けながら、来店者の対応、商品の整理、配達、ものづくり、清掃などに取り組む。
市教委の昨年度のアンケートで、再び機会があれば「ぜひ参加したい」と答えた生徒は85・8%に達し、前回(2019年度)の69・5%から大幅に伸びた。受け入れた事業所側は、「ぜひ継続してほしい」と63・9%が答え、前回の58・0%を上回っている。事業は着実に浸透し、評価を得ていると言える。 生徒にとっては自分が住む地域にどのような企業があり、どんな業務をしているのかを理解できる。高校や大学を経て体験先や同じ業界に就職した例もある。受け入れ側は働く意味と事業所の魅力を伝える好機になる。双方に利点のあることが、体験事業が20年以上続く理由だろう。 学校側は成果として「あいさつや返事などのコミュニケーション、時間の大切さを学んだ」「親の仕事に興味・関心を持った」「親に感謝の心を持てた」といった生徒の気付きを挙げている。数日間ではあっても、学校では得られない学びを吸収して成長につなげるという、密度の濃い体験を今後も提供してほしい。13、14歳の生徒は4~5年後に成人を迎え、有権者になる。職業人としてだけでなく、大人としての自覚や責任も伝えられれば、事業の意義は一層深まる。(古川雄二)