ファミマ弁当「涙目シール」を貼る深謀な仕掛け 「たすけてください」と訴えるイラストの効果は?
しかし、先に紹介したように、私たちは、ハノ字眉に見える表情をする犬に、犬が本当に悲しんでいるかどうかはわからないにもかかわらず、その表情に犬の「助けて」を読み取り、「引き取る」という援助行動をします。つまり、本当に悲しいかどうかは、わからないものの、ハノ字眉に吸い寄せられるのです。 また、私たちは進化心理学的に実在の顔だけでなく、顔のようなものに注目するようにできています。したがって、涙目値下げシールと涙目なしの従来の値下げシールを比べたら、涙目のほうに目が向かうと考えられます。
ですので、イラストでも、フードロス削減のための食品購入という援助行動を一定程度行うものと考えられます。 そして、この援助行動の効果をさらに促進させるためか、「フードロス削減が必要である」というメッセージをポスターにし、店頭に提示するという施策もあわせて実施するとのことです。 明示的に掲げておくことで、「たすけてください」がより真に迫ったものとなり、「道徳的によいことをするのに、金銭が絡むのは嫌だな」というお客さんや「値引き商品を買うのは、気が引ける」というお客さんの心理的負荷を軽減させることにもつながり、フードロス対象商品の購買が増えることが予測されます。
こうしたさまざまなことを考慮して、ファミリーマートは、実証実験を行う店舗を、涙目値下げシール×ポスターあり、従来の値下げシール×ポスターあり、従来の値下げシール×ポスターなし、という3つの条件にわけ、効果の差を見定めようとしているのだと考えられます(ただ、この実証実験の実施場所が全部で6店舗と少なく、期待される条件別の違いや効果が適切に可視化されるか、不安なところはあります)。 人の感情の働きを利用し、購買意欲を刺激するマーケティング手法のことを、エモーショナル・マーケティングと呼び、ときに必要でないものまでも買わせてしまおうとする試みを多々、目にします。しかし、今回の試みは、「買わなきゃ損ですよ」と訴えるわけでもありません。