「団地再生」の成功事例を深掘りして見えたこと 子育て世帯の「入居続々」大阪・茶山台団地
また、近隣にスーパーがないといった事情を受け、空き住戸を活用した食堂「やまわけキッチン」があるのも大きな特徴の1つだ。軽食やお茶を楽しめるため、月に約250人が利用しているという。 取材当日は2月の3連休の日曜日だったが、スタッフの方々の手によってDIYされた居心地の良い空間で、子どもたちがお昼ご飯を食べていたり、ご高齢の方々がお茶をしていた光景がとても印象的だった。 ■いつでも大人の目がある安心感
「団地に住んでいると、入居者の人たちが子どもたちの様子を見守ってくれます。誰かの目があり安心できることもこの団地に入居する魅力の1つですね」と、ここの責任者で子どもを持つ女性は話していた。 このほか、介護や健康、子育てなどの相談やチェックなどができる「茶山台ほけんしつ」というスペースも設けられている。 昨年11月から運営されたもので、「ほけんしつだより」という独自リーフレット(月刊)は、雑誌編集の心得がある入居者が制作に携わっている本格的なものだ。
ちょうど5年前、この団地を取材したときは、今ほど地に足の着いた団地再生の姿を目にできようとは、正直なところ考えられなかった(『入居希望者が続々集まる「茶山台団地」のすごみ』)。 運営する大阪府住宅供給公社や行政などの支援があるから可能なことなのだろうと、いぶかしんでいたからである。 何か大きな変化があったのだろうか、と考え、思い当たったのが、この5年に起こった大きな出来事、コロナ禍だ。 たとえば「やまわけキッチン」では、コロナ禍を契機に団地に住む希望者にお弁当やお総菜を届け、それを通じて定期的な独居高齢者との交流を確保し、体調を確認するなどの取り組みを行ったという。
■コロナ禍を経て強まったコミュニティー コロナ禍は大きな社会的混乱、人と人とのつながりを分断するような出来事だったが、茶山台団地ではそれを乗り越え、より強固なコミュニティー形成につなげたのだろう。 茶山台団地には、団地再生を自分事としてとらえる入居者や地域の人々の努力がある。 そのうえで思うのだ。このようなコミュニティー形成による団地再生のかたちを全国津々浦々に広めようとするのは至難の業だろう、と。コミュニティー形成は人づくり、人の参加が不可欠であり、大変根気の要る事業だからだ。