エンジンコンディションは吸排気バルブ周りが大きく影響
負圧状況を作り出し旧排気バルブの密閉度を測定
内燃機加工を依頼した埼玉県川越市のiB井上ボーリングでは、精密機器として知られ、信頼性が高いスイスのミラ社製シートカッターを利用しています。作業前にバルブステムの突き出し量が測定され、吸排気バルブの当たり位置に合わせてからシートカットを行います。
シートの当たりには「位置」と「幅」があります。チューニングエンジンでは、燃料冷却のある吸入バルブは当たり位置を「外当たり」で依頼し、高温になる排気熱にさらされる排気バルブは、フェース面のほぼ中央に指定する例が多いようです。 外当たりにすることでビッグバルブ効果を得られ、高温の燃焼ガスにさらされる排気バルブは、当たり位置を中央付近にすることで、バルブ本体への熱の伝導効率を高める効果が得られます。エンジンチューナーの考え方によって、このあたりの見解は異なることもありますが、今回は街乗り車なので、吸排気バルブともに、当たり位置は標準の中央寄りに、当たり幅は1.0mmで依頼しました。この当たり幅に関しても、様々な考え方がありますが、幅が広ければ接触面積が増えるため、熱伝導性が高まると言われています。
シートカット後には、当たり位置と幅の確認を行いますが、その前にバルブフェース研磨機で、バルブ傘の当たり面=バルブフェースを整えます。エアー式バルブラッパーと呼ばれるツールを使って、バルブシートとバルブフェースはバルブコンパウンドを使って整えます。最後に、光明丹を利用して、摺り合わせ状態を手作業で確認します。吸排気バルブともに、当たり位置は中央付近かつ、当たり幅は1.0mmに仕上げて頂きました。 最後に負圧計を利用し、吸排気バルブをセットした状態の各ポート端面に計器の測定部を押し当てます。バルブシートの当たりが悪く僅かでも隙間があると、計器の針は規定エリアまで上昇せず、圧縮漏れを招くコンディションになります。エンジン部品の加工段階で、組み立て時を意識した作業進行にすることで、後々、トラブル無くスムーズなエンジン組み立てが可能になります。
たぐちかつみ