フランスや伊など7カ国、EU財政規律違反の手続き対象に-関係者
(ブルームバーグ): 欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は、フランスとイタリアを含む加盟7カ国について、昨年の財政規律違反に関する手続き対象になると19日に発表する見込みだ。非公開情報を理由に事情に詳しい関係者1人が匿名を条件に明らかにした。
スペインと他の3カ国も2023年の財政赤字が国内総生産(GDP)比3%以内というEUの財政基準を上回ったが、手続きの対象リストには掲載されていないという。
イタリアとポーランドは、公的債務残高がGDP比60%を超え、財政赤字が3%を上回る国への措置を盛り込むEU規則に違反したとして、「勧告」を受ける見通しだと既に明らかにしていた。
フランスにとって、財政規律違反に関する手続きの公表は、最悪のタイミングといえる。欧州議会選での極右政党・国民連合(RN)の圧勝と中道の与党連合大敗を受け、マクロン大統領は先週9日、国民議会(下院)を解散し、総選挙を実施すると発表した。
解散・総選挙はRNが議会で多数派を占め、極右の首相誕生に道を開くか、少なくとも経済・予算関連法案の通過が難しい分裂議会につながりかねない。フランスの逼迫(ひっぱく)する財政状況にがぜん注目が集まり、市場は動揺した。
マクロン大統領の与党連合が議会で議席を失えば、フランスの財政赤字と公的債務への対応が一層難しくなると懸念される。
財政規律違反に関する手続きはEU当局との緊張を高め、市場のセンチメントを損なうリスクをはらむ。
キャンドリアムやブルーベイ・アセット・マネジメントを含むファンド運営会社は、マリーヌ・ルペン氏が実質的に率いるRNが総選挙で勝利するような場合、さらなる損失を被る危険が残ると考え、フランス国債を避けている。
そうした観測がフランス国債の売りを加速させ、10年国債のドイツ国債に対する上乗せ利回り(スプレッド)は80ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)弱に拡大した。キャンドリアムで最高投資責任者(CIO)を務めるニコラス・フォレスト氏によれば、この節目を突破すれば、ユーロ圏のソブリン債危機で経験した100bpに達する恐れもある。