日・独・韓・スペインが激突!? フリゲート艦入札をかけた「W杯豪州大会」開幕!
去る2月20日、オーストラリア政府が豪海軍増強調達計画を発表した。3000~5000tクラスの汎用フリゲート艦11隻を海外から購入するという。そこには、我が国の海上自衛隊が運用開始している「もがみ」型護衛艦の名もある。 【写真】「もがみ」の船内やライバル国のフリゲート その他には、ドイツのMEKO200型フリゲート、韓国の大邱級フリゲート艦、スペインのALFA3000の名が上がる。予算は5兆3400億円で、2020年代後半から11隻を導入する計画だ。 突如始まった"フリゲート艦ワールドカップ豪大会"。一体この戦いはどこが勝つのだろうか。「歩くジェーン年鑑」と呼ばれるフォトジャーナリスト・柿谷哲也氏に話を聞いた。 * * * ――まず、なぜ豪政府はこの決断をしたのですか? 「豪は長年にわたって、中国に対して甘い政策を取ってきましたが、昨今の習近平政権の中国は、南太平洋諸国に経済協力などを餌に食指を伸ばしてきた。そこで、今回の豪政府の決断となりました」 ――しかし、なぜ3000~5000tフリゲート艦11隻という重さと数になったんですか? 「3000~5000tと軽量型フリゲートを主力として検討してるのは、中規模海軍が6000t超えるフリゲート・駆逐艦を揃えてきた潮流とは異なります。 大きい船体に載せる対空レーダーや対水上レーダーも3000t級に載せることができます。ミサイル搭載量や航続距離では劣りますが、これを隻数で補い、小さい港でも接岸し補給することで警戒監視の幅を広げる意図があるようです」 ――南下する中国海軍に対して、数で防御するということですね。すると、海自のもがみ型は有利になるのでしょうか? 「もがみ型に実際乗ってみて分かったのは、これまでの護衛艦に無い近未来的な設備と、既存艦で慣れた使い勝手の良さとのバランスが良いと感じました。 そして艦艇は、多く造れば造るほど洗練されていくことは米海軍のアーレイバーク級駆逐艦を見れば分ります。もがみ型は、発展型FFM(対潜防空能力を有し、機雷敷設も可能な多機能フリゲート艦の意味)として今後20隻以上、建造されるので期待できます」 ――ならば、日本は有利だと。 「いいえ。多く造られたという実績でいうと、ドイツのMEKO200がすでに34隻、完成し、豪海軍も導入しました。独が今回提案するのは、MEKO A-200でステルス性を高めたタイプ。豪の要望である拡張性のある船体設計が可能です」 ――スペインのフリゲートはどうなんでしょう? 「豪はすでにスペインから強襲揚陸艦2隻を購入しています。豪はかつて政権交代で労働党政権へ移行した際に、A4スカイホーク攻撃機を搭載していた空母を手放し、スクラップとして中国に輸出しました。その後アメリカから中古で買った揚陸艦2隻を、ヘリ空母として改造していました。 しかし、その運用と旧さに限界が来ました。そこでスペインから2隻購入したわけです。いまのところ国防省は否定していますが、空軍がF35Bを導入し、この艦に載せることができる可能性はあります」 ――そのスペイン&豪のコンビがうまくいけば、11隻のALFAフリゲートと共に強力な揚陸艦隊となり、対中国抑止には効果的なんでしょうか? 「強襲揚陸艦の護衛にALFAを当てることはあると思いますし、豪海軍はイージス艦を持っています」 ――では、海自の強烈なライバルとなり得る韓国はどうなんでしょう? 「大邱級はもがみ型より一回り小さい3500tです。おそらく韓国は大邱級より大きく、一番艦が今年秋に就役する忠南級4300tを提案するはずです。 両艦とも絶対に日本製よりも安いので、搭載するセンサー、武器類に豪は予算を掛けられるメリットがあります。また、電気推進とガスタービンエンジンのハイブリッド式で燃費が良く、さらに静粛性が高いので、敵潜水艦から被探知を防げます。 しかし何と言っても、今、全世界に向けてイケイケの武器輸出国となった韓国人ビジネスマンの存在が日本にとって最も脅威です」 ――韓国は現在、世界第9位の武器輸出国であり、2022年には173億ドル(約2兆8000億円)とすさまじい売上を上げています。日本は世界第7位、約13億ドルの武器輸入国です。勝負はあったんでしょうか......。 しかし豪は今回、最初に3隻購入して、残り7隻は現地生産をする予定です。これは日本にとって有利にならないのでしょうか?