岡田准一「白い巨塔」 沢尻エリカ、飯豊まりえら女優陣にも注目
V6の岡田准一が主人公・財前五郎を演じるドラマ「白い巨塔」(テレビ朝日系)が22日にスタートした。26日(日)まで5夜連続で21時から、同局の開局60周年記念ドラマスペシャルとして放送される。
名作の系譜 鬼気迫る田宮版、平成の唐沢版など
原作は医学界の腐敗を追及した山崎豊子氏による社会派小説。1966年に田宮二郎主演で大映が映画化し高評価を受けて以降、67年には佐藤慶主演でドラマ化(NET・東映テレビプロ制作)。78年には田宮たっての希望で原作小説「続・白い巨塔」まで含めてドラマ化された(田宮企画・フジプロダクション制作)。この78年のドラマ版は、田宮が最終回収録後に猟銃自殺を遂げたことから、その時点で未放映回として残っていたラスト2回分がきわめて大きな話題を呼んだ。当時精神的に不安定だったとされる田宮の演技が、奈落の底へ落ちていく主人公・財前と重なり、鬼気迫る演技として語り継がれている。その後、90年には村上弘明主演で2夜連続のスペシャルドラマ化(テレビ朝日・大野木オフィス制作)。2003年にはフジテレビ・共同テレビ制作、唐沢寿明の主演で全21回のドラマ化が実現した。また、韓国でも07年にキム・ミョンミン主演でMBCがドラマ化している。 時代の変化に合わせながらたびたび映像化され、いまや医療系ドラマのクラシックとなりつつある同作。2003年の唐沢版放送の際には、やはり田宮版にはかなわない、との意見が目立ったものだが、岡田版が登場した今は、「白い巨塔」といえば唐沢、との声がネットに躍る。最初に「白い巨塔」に触れたのがどのタイミングだったかで、視聴者の贔屓も変わってくる楽しさがあるということだろう。何役は誰が良かった、いや誰のほうが、と語り合うのもブロードウェイミュージカルのようで興味が尽きない。
愛人役・沢尻エリカ出色の出来 飯豊まりえのお嬢様感も
今回、第1話では浪速大学医学部第一外科准教授の財前五郎(岡田)が、教授の座をめぐる野心にまみれた人間関係の中で、傲慢なまでにひた走る姿が描かれた。財前家に婿入りした財前の境遇をはじめ、同期で第一内科准教授の里見脩二(松山ケンイチ)とともに師である第一外科教授・東貞蔵(寺尾聰)に仲良く教えを受けていた過去なども描かれ、財前がいかに人格形成されていったかがわかりやすく伝わってきた。故郷で暮らす実母(市毛良枝)に電話をかけるシーンでは、家族思いの優しい息子にすっかり戻っていたのは見事。また、話の成り行きが都合悪くなった財前が、里見から逃げるように病院内を走るシーンがあるが、本来は心ゆるせる友でありながら医師として対照的な立場に分かれた2人が医学界という巨大な迷宮をさまよっているようでもあり、そんな2人の“追いかけっこ”はどこかせつなくて印象的だった。 野心と欲望に取り憑かれたような男どもの闘いが描かれる中、女優陣の芝居も見逃せない。バーのホステスで財前の愛人・花森ケイ子役はこれまで名だたる女優が演じてきたが、今回の沢尻エリカは第1話を見る限り出色の出来。店で医学部部長の鵜飼裕次(松重豊)と東を接客する場面、振り返った姿はフェルメールの絵画のような美しさ。それでいて財前と甘い時間を過ごす場面では可愛いさが漂い、役にしっかりはまっている印象だ。また、東の娘で浪速大学病院図書館で司書として働く佐枝子を飯豊まりえが演じているが、お嬢様感が出ていてこちらも好演だ。 今夜は第2話が放送されるが、リメイクドラマに関しては前作と比べられるのは宿命で、とりわけキャスティング面での違和感はつきもの。とくに“演目”が名作であれば、ファンの思い入れもそれだけ深いものがある。今回もネット上には厳しい意見も散見されるが、全5話の短期集中でそのあたりがどう解消されてくるか。岡田版に期待したい。 (文・志和浩司)