200年前の姿だと!? 現役最古のイタリア軍艦まもなく来日「世界で最も美しい船」見どころは?
軍艦「コロンブス」の姉妹艦として誕生
イタリア海軍の練習帆船「アメリゴ・ヴェスプッチ」が2024年8月25日から30日にかけて、東京港国際クルーズターミナルに寄港し一般公開を行う予定です。 【違和感しかない】タイムスリップか異世界転生か… 米空母と並走する帆船「アメリゴ・ヴェスプッチ」(写真) 同船は、第二次世界大戦前、いわゆるムッソリーニ政権期にイタリア王立海軍の練習艦として誕生し、大戦の敗北を経て共和制となった後も、一貫して同国海軍に所属し続けた貴重な歴史の生き証人。現役のイタリア軍艦のなかでは最古参といえる船を間近で見ることができるチャンスがやってきます。 改めて「アメリゴ・ヴェスプッチ」の艦歴を振り返ると、イタリア南部の港町カステッランマーレ・ディ・スタービアの王立造船所(現フィンカンティエリ)でクリストフォロ・コロンボ(英名クリストファー・コロンブス)級練習艦の2番艦として建造されました。1931年2月に命名・進水した後、同年5月に王立海軍へ引き渡され、6月にリヴォルノ海軍兵学校の練習艦として就役しました。 第二次世界大戦の勃発後も1940年を除いて訓練航海を行っており、イタリア王国の枢軸国離脱とイタリア社会共和国(いわゆる北イタリア)との内戦、王政の廃止、平和条約による軍備制限という激動の時代を生き延び、1960年に開催されたローマオリンピックではギリシャからの聖火輸送という栄誉ある任務に就いています。 なお、これは姉妹艦の「クリストフォロ・コロンボ」が賠償艦としてソヴィエト連邦(現ロシア)に引き渡され、1963年に火災で失われたのとは対照的です。
「世界で最も美しい船」との異名も
設計者はフランチェスコ・ロトゥンディ中佐(当時)。船体のデザインは18世紀から19世紀にかけて活躍した戦列艦を参考にしつつ、船首から船尾まで連続する3つのメインデッキと主要な2つの上部構造物(船首楼と船尾楼)などで構成されています。 船体は今や貴重なリベット打ちで接合されており、戦列艦の砲列甲板をイメージした2本の白い帯が描かれています。船首には、「アメリゴ・ヴェスプッチ」をかたどった金メッキブロンズの船首像を配置し、純金箔で覆われた木製の船首フリーズと船尾のアラベスクが船を彩っています。こうした優雅で荘厳なデザインから「世界で最も美しい船」「海の女王」とも紹介されています。 甲板には3つの垂直マスト(フォアマスト、メインマスト、ミズンマスト)と4番目のマストとして機能するバウスプリットが備えられており、総帆面積約2650平方メートルにも及ぶ24枚の帆を張ることができます。メインマストの高さは54m。バウスプリットまで含めた船体全長は101mで、最大幅は15.5mとなっています。 一方で、2000年以降の近代化改装によって、ディーゼル発電機と電気モーターを組み合わせた電気推進システムを採用するとともに、マストへのLED照明や衛星通信システムの導入など、現代の航海に必要な最新の技術も取り入れられています。 乗組員は、15人の将校、30人の下士官、34人の軍曹、185人の上等兵と兵を含む、264人の軍人で構成されていますが、訓練航海中はリヴォルノ海軍兵学校から約100人の士官候補生と支援スタッフが加わり、乗組員は約400人規模まで膨らみます。