「あえて付加価値をつけてません」売上高300億円の飲料メーカーが打ち出す“斬新すぎる戦略”
ここ数年PB(プライベートブランド)商品の需要が高まっている。大手流通業イオンのPBであるトップバリュの売上高は、23年2月期、9025億円(前年比10%)と過去最高を記録した。23年度には1兆円に届く勢いだ。今後も需要拡大が見込まれるPBだが、その人気を支えるある企業をご存じだろうか。(穂座来萬大/5時から作家塾®) 【画像】食品のPB率は2年超で爆上がり! ● セブンプレミアム、トップバリュ、情熱価格… PB需要拡大の背景は? いまや生活必需品のひとつとして定着した感がある「PB(プライベートブランド)」。PBとは、小売業者や流通業者など、本来自分たちでは商品を企画・生産しない業態の企業が独自のブランドを持ち販売する商品群のことである。 具体的には、小売・流通業者の主導の下で製造業者等と連携し開発し、生産される独自のブランド商品を低価格で販売すること。NB(ナショナルブランド)の対義語として使われる。 PBの例としては、セブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム」、イオングループの「トップバリュ」、ドン・キホーテの「情熱価格」、無印良品の「元祖」などが挙げられる。 PBの最大の特徴は、「価格の安さ」である。小売業者がNBを販売する場合、仕入れ価格に開発メーカーの広告宣伝費や物流費などが上乗せされているため、店頭価格も必然的に高くなる。 一方でPBの場合には、小売業者が商品を企画し各種のコストを調整できるため、広告宣伝費や物流費などのコストを減らすことができ、店頭価格を安く抑えることができる。 これまでもPB自体は存在していたのだが、国内においては従来から「NB信仰」が比較的強かった。しかしながら昨今の物価高や値上げ傾向を背景にして、価格維持がされやすいPBの需要が大きく高まっているのだ。
● 飲料分野でPBを支える 「巨大黒小企業」とは? そんなPB商品のなかでも、「斬新すぎる戦略」で注目を集める飲料メーカーがある。 年間5700万箱本を製造/販売する飲料メーカー、株式会社ライフドリンクカンパニー(以下、LDC)だ。売上高は2023年3月期で約300億円。2023年6月には東証プライム上場を果たした。 LDCの主力事業は、飲料のOEM※事業および自社製品開発事業である。売上ではOEM事業が約6割を占める。LDCはPB市場がまだそれほど大きくなかった2001年から飲料のOEM事業を展開し、現在では30種類以上のPB商品のOEM生産を受託している。 ※「Original Equipment Manufacturing(Manufacturer)」を略した言葉で、日本語だと他社ブランドの製品を製造すること(あるいはその企業)を指す。 「当社は1972年に設立して50年以上たつのですが、もともとも日本茶の卸売業をしていました。90年代くらいから日本では水とかお茶を『買って飲む』という生活習慣が出てきて、時代が下るにつれてその傾向はずいぶんと定着してきました。 そういった背景で、小売の方たちからは直接的に『こういった商品が作れないか』『こんな商品が欲しい』というご要望をいただくことが多かったんです。われわれは常に小売さんに寄り添った総合食品メーカーというスタンスでお付き合いさせてもらっており、飲料事業もそういったお客様からの声に応えていくなかで次第に大きくなっていきました」そう話すのはSCM本部長の橋本知久氏だ。 LDCは独自のビジネスモデルにより、小売業者へ低価格で製品を提供しているという。