【絶好調の大谷】野球を誰もよりも愛している。大谷翔平の強さは野球への姿勢にあった!
ドジャース・大谷は野球が好きすぎるんだろうね。彼はお金には興味がない。『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』(朝日新書)のなかで、「ロサンゼルス・タイムズ」記者のディラン・ヘルナンデスと、「ジ・アスレチック」記者のサム・ブラムは大谷の野球に対する姿勢を称賛する。大谷のストイックな一面やお金に関する考えを一部抜粋して解説する。 【写真】イチローだけじゃない!MLBの年金額「満額支給」の日本人選手がこちら(ほか3人) ※記事中の「トモヤ」は在米ジャーナリストの志村朋哉さん。3人による会談は昨年中に行われました。 ■野球がすべて トモヤ 23年の大谷は、シーズン最後の1カ月を欠場しながらも、WARでメジャー1位の10を記録するという異次元な活躍だった。今年の大谷で最も印象に残ったことは? サム 打撃は素晴らしかった。でも僕は、毎日プレーし続けようとする姿勢が最も印象に残った。 8月23日に肘の靭帯を損傷した時も、レッズとのダブルヘッダーで、第1試合に登板した。2試合目が始まる前には、2度目の手術が必要かもしれないことが判明していた。彼のフリーエージェントとしての価値は不透明になり、キャリアの方向も変わるかもしれない。手に入れるはずだった数億ドルが消えたかもしれない。それなのに、彼はどうしたと思う? 第2試合に出場したんだ。すでにチームはプレーオフ争いから離脱していたから、なんの意味もない試合だったのに。 僕には彼の考え方の根本を本当の意味では理解できないと思う。全く意味のないことであっても野球のグラウンドに立ちたいという必死さなのかもしれない。オフにフリーエージェントになるのだから、できる限りいい契約を勝ち取るためにも、無事にシーズンを乗り切るだけっていう選択もできたけど、彼はそうする人間じゃないんだ。チームをプレーオフに導くために自らを犠牲にすることを厭わずに何でもする。賞賛に値するよ。
ディラン そういう意味では、彼はまだ日本の高校生なんだと思う。 大谷が野球一筋だという話を聞いた時、僕は「ありえない。何か裏があるに違いない」と疑いの目で見ていたんだ。彼が日本ハムでプレーしていた頃、球団は1年目、2年目の若い選手のために寮を用意していた。その期間が終われば寮を出るのが普通なんだけど、大谷は「練習場のすぐそばだし、食事も出るから」とそこに住み続けていた。高校時代のコーチも、「引っ越せ、彼女を作れ、人生を楽しめ」と言ったらしいんだけど、大谷は生活を変えなかった。 日本ハムの選手たちがタクシーを拾う場所で、何人かの運転手に、「大谷を乗せたことありますか?」と聞いてみたんだ。「彼はたいてい他の若手と一緒に乗って、いつも野球の話をしている」と言っていた。「どこに連れて行くんですか?」と聞くと、「寮に連れて帰るよ」と。「他の場所に連れて行ったことは?」と聞いても、「ない」って言うんだ。「まじかよ!」と思ったよ。 野球が好きすぎるんだろうね。彼はお金には興味がない。 23年の大谷で、最も印象に残っているのは走塁の姿だな。ワイルドカード争いで5、6ゲーム差を付けられているような状況でも、出塁したら本気で走るんだから。シングルの当たりで二塁まで走ったり。その一生懸命な姿勢は、ある意味とても純粋。だからこそ、それを止められる大人の存在が必要だと思う。誰かが彼を抑えないと。日本のやり方は選手を壊してしまうという現実があるから。日本ハムは、幸いなことに、健康面に気をつけてくれる組織だった。高校時代のコーチも彼の将来を見据えてくれていた。だから、彼は比較的よく温存されたまま、アメリカに来られた。 以前は彼の発言を、「本当にそう思っているのか?」と疑っていた。たとえば、フリーエージェントになることについて、「まだ考えていない」と言ったり。でも彼の言葉を額面通りに受け取ってみると、確かにその通りに行動しているんだ。接戦を落とした時なんかに、「もう忘れて明日のことを考えよう」と言うんだけど、本当にそう考えていると思う。彼ほど前向きに考えるのが上手な人はいないよ。