『葬送のフリーレン』ヒンメルが遺した記憶を振り返る “くだらない魔法”がつないだ絆
第2期の制作が発表され、大きな注目が集まっているTVアニメ『葬送のフリーレン』。同作のメインストーリーでは、主人公のフリーレンと勇者・ヒンメルによる切ない関係性が描かれてきたが、続編では一体どんな展開が待っているのだろうか。 【写真】『葬送のフリーレン』作者・アベツカサによるお祝いイラスト 今回は第1期の復習を兼ねて、2人が作中で繰り広げた名シーンの数々について振り返ってみたい。 『葬送のフリーレン』第1話「冒険の終わり」次回予告/各動画配信サービスで配信中 まずは第1話。ご存じの通り、同作の物語はヒンメル率いる勇者一行が魔王を倒し、王都に凱旋を果たすところから始まる。役目を終えた勇者一行は解散し、フリーレンは一人旅を経て、50年後に王都へと帰ってくるのだった。 しかし長命のエルフである彼女とは違って、その時すでに人間のヒンメルは寿命が尽きる間際。永遠の別れに思いがけず後悔の念を覚えたフリーレンの口から出てきたのは、「人間の寿命は短いってわかっていたのに、なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう」という何とも切ない言葉だ。こうしてフリーレンはヒンメルと本当の意味で向き合うため、2度目の旅に出るのだった。 ●蒼月草が呼び起こす旅の記憶 第2話後半における“蒼月草”のエピソードでは、時間を飛び越えて2人の心が深く交わるところが描かれていた。 勇者一行が旅をしていた頃のこと。フリーレンが「花畑を出す魔法」を使った際、ヒンメルは故郷に咲くという美しい花・蒼月草について語り、「いつか君に見せてあげたい」とフリーレンに伝えた。そこには遠回しに、“故郷に連れていきたい”というメッセージが込められていたものと思われる。しかし当時のフリーレンは言葉の意図を汲みとれず、「そう、機会があればね」とそっけなく返事をしていた。 だが、現在の彼女は違う。ヒンメルの銅像を他のどの花でもなく、蒼月草で飾ることにこだわり、その実物を探すために森の中を奔走するのだった。苦労のすえに蒼月草が咲き誇る場所を見つけたフリーレンは、「遅くなったね、ヒンメル」とつぶやく。数十年越しに2人の想いが通じ合った瞬間であり、切なくも感動的な名シーンだ。 なお、後に分かることだがヒンメルはこの村だけでなく、あちこちで自分の銅像を作らせていた。第7話で語られたところによると、その理由は後世に自分たちの姿を残しておくことで、「君(フリーレン)が未来でひとりぼっちにならないようにするため」だという。このエピソードだけでも、フリーレンに対するどこまでも真摯な思いやりが伝わってくるだろう。 ●鏡蓮華が持つ「久遠の愛情」の意味 ほかにもヒンメルのあふれる想いが伝わってくるシーンは多く、フリーレンにスカートめくりする少年にブチギレたり、投げキッスに失神したりと、微笑ましいやりとりがいくつもあった。 その中でも強烈な印象を残したのが、第14話の回想シーンだ。過去のヒンメルは、討伐依頼でがんばった彼女へのプレゼントに指輪を贈ったことがあるのだが、その指輪は「久遠の愛情」を花言葉とする鏡蓮華の意匠が施されたものだった。 フリーレンが適当に選んだ指輪だったものの、ヒンメルは明らかにその意匠に気づいていた様子。その証拠に彼はフリーレンの目の前で厳かにひざまずき、そっと左手の薬指に指輪をはめていた。まるで結婚指輪のように……。当時のフリーレンはそこに込められた意味に気づけなかったが、数十年越しに“大切なもの”を与えたという意味で、彼の想いは決して無駄ではなかったと言えるはずだ。