グッチ、サバト・デ・サルノによる初のメンズウェアはウィメンズコレクションのミニマリズムを踏襲【2024年秋冬コレクション】
ミラノ・ファッションウィークのオープニングを飾ったグッチのショーは、ほかのどのブランドと比べても最も期待されたイベントだったのは言うまでもない。開催に至るまでの数日間、フィレンツェのピッティ・ウオモの通りを行き交う関係者の間でいちばんの話題となっていたし、ほんの数時間前にフィレンツェからミラノへ向かう列車の中でもそうだった。もちろん、それがグッチだからであることに変わりはないのだが、すでにウィメンズウェアで自身の方向性を示していたサバト・デ・サルノ初のメンズウェア発表の場でもあったからだ。 【写真を見る】グッチの2024年秋冬メンズコレクションをチェック! ■ウィメンズウェアのミニマリズムを踏襲 つい最近まで同ブランドのメンズおよびウィメンズコレクションの発表は、2月と9月のファッションウィークに開催される男女混合ショーに託されていた。それが覆されたのはちょうど1年前のこと。クリエイティブ・ディレクター不在のままデザインチームが手がけた、2023年秋冬コレクションが昨年1月のメンズショーと2月のウィメンズショーでそれぞれ披露された。 慣例は変わったとしてもセオリーはそのままだと言えるのは、サバト・デ・サルノのグッチに一貫性があるからだろう。昨年9月のウィメンズショーと今回のメンズショーを隔てる4カ月の空白などなかったかのように、まるでその2つが一続きのショーのように感じられたのだ。The xxのロミーやマーク・ロンソンなどが再び起用されたサウンドトラックだけでなく、暗闇に一筋の光がランウェイを浮かび上がらせる演出も前回のショーを踏襲するものだった。 デ・サルノ自身が述べているように、今回のコレクションには9月のウィメンズコレクションを意図的に彷彿とさせる6つのルックが含まれている。ごく短いショートパンツに代わってロングパンツがスタイリングされたオープニングルックもその一つだ。また、ゴールドのジュエリーはシルバーに替わり、グレーのフーディはプルオーバーからジップアップに、ロゴの位置も左胸に小さくリデザインされている。 ボンバージャケットなどのアウターウェアをはじめ、いくつかのルックには前述の2023年秋冬コレクションを思わせる要素が垣間見られ、それがデ・サルノのビジョンが注がれた絶対的な主役級アイテムの間を縫うように披露された。ランウェイの床にふれそうなほど長いコートや、9月のウィメンズショーでのスカートを思い起こさずにはいられないレザージャケットなど、アウターウェアを引き立たせるために下半身は控えめなスタイリングを施しているのも彼の特徴と言えそうだ。 ■あらゆるワードローブに取り入れやすいスタイル アンクル丈のパンツは主役であるホースビットローファーを覆い隠すことなく、逆に床に付くほど長いジーンズは、裾に施されたスリットから下のシューズをちらりとだけ見せていた。小物も当然ながらふんだんに披露され、ほとんどのルックに見られたスカーフタイはさながら“インディ・スリーズ”のスタイルを思わせた。デ・サルノがグッチで示したビジョンから受けた印象として、彼はある特定の美意識を前面に押し出すのではなく、あらゆるワードローブに取り入れやすい要素を万人に用意しているように感じられた。 イベントに出席した大勢のセレブリティたちは、皆それぞれの個性を反映したかのようなグッチのルックに身を包んでいた。マーク・ロンソンはスリムなグレーのスーツを、イドリス・エルバは大きなロゴ入りコートを、またシャツとネクタイを身に着けたエリオット・ペイジは、よりクラシックなスーツジャケットの代わりにオーバージャケットを合わせていた。イタリアの俳優ロレンツォ・ズルゾロは、自身の装いに向けられた賛辞に対して、彼自身が心地よく着られるルックをデ・サルノと協力して作り上げたと強調した。デ・サルノにとって、服はあくまでも着る人とその人のストーリーを引き立たせるアクセサリーなのだ。 From GQ Italia By Francesco Martino Translated and Adapted by Yuzuru Todayama