「人生を遊ぼうぜ!」奥平大兼・鈴鹿央士W主演 青春“eスポーツ”映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』古厩智之監督インタビュー
数々の映画賞新人賞を受賞した奥平大兼と鈴鹿央士がW主演を務める、映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』が、3月8日(金)に劇場公開される。 本作はeスポーツを題材にした日本初の劇映画で、観客をあの頃の清々しい気分へと誘う青春映画。同じ学校に通いながら一度も交わることがなかった男子学生3人が、急造のチームを結成し、高校eスポーツ大会の全国大会出場を目指して奮闘する。 3人編成のチームメンバー、金髪ピアスの人気者・郡司翔太に奥平大兼、チーム結成の発起人である天才ゲーマー・田中達郎に鈴鹿央士、人数合わせで呼ばれたVtuberに夢中のクセ強男子・小西亘を小倉史也が演じる。 本作は徳島県にある阿南工業高等専門学校(以下、阿南高専)で起きた実話にインスパイアされた映画だ。 実在した生徒たちの物語に興味をひかれメガホンをとったのが、上野樹里主演の『奈緒子』(2007)、ベストセラーを映画化した『ホームレス中学生』(2008)、近年では、ボルダリング女子を描いたコミックが原作の『のぼる小寺さん』(2020)など数々の青春映画を世に送り出してきた古厩智之監督だ。この度、出演俳優との制作秘話やタイトル『PLAY!』に込めた思いなどを話した監督インタビューが公開された。
古厩智之監督インタビュー
――本作に携わることになった経緯を教えてください。 最初にチーフプロデューサーの古賀さんから、実話をもとにしたeスポーツの映画の企画があるということで、話だけでも伺おうと思ってお会いしました。 そうしたら「まずはモデルとなった彼らに話を聞いてみましょう」となって、阿南高専の元生徒たちにインタビューさせてもらったんです。それがすごく面白くて、やらせていただくことになりました。 ――具体的に面白いと思ったポイントはどんな点ですか? 彼らが実際に大会で東京に出てきたときに、大会が終わって、1日フリーな時間があったらしいんですね。それぞれ別行動をしていたのに、秋葉原で鉢合わせちゃうんです。お互いに気づいているのに、誰も声をかけなかった。 このエピソードを聞いて、僕は”何だそれ”と思うと同時に、すごく”それっぽい”と思いました。彼らはお互いに踏み込まないんです。それは優しさでもある。彼らは自己主張もあまりしないけれど、その場はちゃんと回していく。そこが面白いと思ったので、彼らの距離感も大切に描きました。 ――モデルとなった阿南高専の生徒たちに会われたことを踏まえ、本作の登場人物である翔太、達郎、亘のキャラクターをどのように作っていったのでしょうか。 翔太のモデルは、高校生の頃はやんちゃで、女の子にもモテて、元気で陽キャな部分があったので、それを活かしました。翔太は弱さや苦しさを抱えていますが、それは優しさと表裏一体です。だから弟たちや親父にもずっと受け身でいる。そういう部分は奥平君が作ったもので、すごく良かったと思います。 達郎のモデルとなった彼も実際にリーダー格で、クールで自分のことを客観的に見ている感じが魅力的でした。鈴鹿君の達郎は、モデルの方よりも男っぽかったです。 亘のモデルの男子は、当時、まだ高専の専攻科の学生だったので、僕たちが撮影していた横の校舎にいたんですよ。なのに取材の場に1回しか来てくれなかった。他の2人に「なかなか会えないんだけど、どういう子?」と聞くと、「ああ~(笑)」みたいな感じで(笑)。 亘のモデルの男子は、当時、まだ高専の専攻科の学生だったので、僕たちが撮影していた横の校舎にいたんですよ。なのに取材の場に1回しか来てくれなかった。他の2人に「なかなか会えないんだけど、どういう子?」と聞くと、「ああ~(笑)」みたいな感じで(笑)。 その亘を演じた小倉君は俳優3人の中で一番の歳上で、キャリアも一番長いんですよね。自分の立ち位置や、自分が何をするかということを考えて、お芝居を作っていける人だと思います。亘のヘアスタイルも、彼のアイデアです。モデル本人は直毛なんですけど、小倉君が「亘はモジャモジャがいいな」と考えてくれました。 ――3人が暮らす街も魅力的でした。ロケーションについて教えていただけますか? 実際に阿南高専で撮影することは決まっていたので、阿南市をロケハンすると、フランチャイズ店が連なるロードサイドでした。そういう町も好きだけど、今回は“もうちょっと小さい町がいいな”と思っていました。 そんなとき、カメラマンの下垣外君が阿南市の隣にある日和佐地区に、たまたま移住していたので行ってみたんです。 日和佐には海があって、古いお寺や無人駅があって、いわゆる大林映画のようなスモールタウンで、すごく良かった。そんな経緯で、このロケーションに決めました。 ――映画化発表にあたって「すみっこの町で HIP HOP映画を撮るように、eスポーツの映画を撮れた」とおっしゃっていました。このコメントに込められた思いについて教えてください。 『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015)とか、いくつか好きなHIP HOP映画があるんです。HIP HOP映画は、生活に根差しているところから生まれてくるから面白いんですよね。そんなふうに撮れたらいいなと思っていたんです。 ――監督は数々の青春映画を作られてきましたが、今回はどんな作品にしようと思われたのですか? 今まで青春ものを撮影するときに、“社会的なものは描かなくてもいいかな”と思っていたんです。家族や彼らの仕事、親の辛さみたいなものを描くよりも、子どもたちだけを描く方がやりたいことに集中できるので。 でも今回、モデルになった3人に話を聞くと、それぞれにいろいろなものからスポイルされているのを感じました。なので、彼らの親を通して社会を描くことで、彼らの立ち位置が描けると思ったんです。 周りにギャングしかいなくて、ずっと貧乏で‥‥というHIP HOP映画とは全然違うけど、彼らの生活に根差した青春映画が撮りたかったんです。 ――タイトルの『PLAY!』は、ゲームをプレイすることと、達郎の「遊ぼうぜ」というセリフにかけているのでしょうか? そうですね。本編冒頭で翔太の父親が「人生は勝つか負けるしかないんだよ! だったら勝たなきゃしょうがないだろ」と呟くように、人生や勝負事に“勝つ映画”を作りたいんですけど、映画の中で勝つことは難しい。難しいけど、挑戦する価値はあると僕はいつも思っています。 奇跡が起きたことによって優勝して仲間と手を握るのっていいじゃないですか。でも今作は実話ベースなので奇跡は起きないことが決まっている(笑)。だったら、どういう思いを込めようかということはずっと考えていました。 負けるのも人生じゃないですか。そういった意味で、人生のどういった側面を肯定していくか?ということを考えて付けたタイトルなんですね。“勝て”じゃない、“遊ぼうぜ”なんです。
otocoto編集部