内水氾濫 迅速に把握 11市町村でカメラやセンサー 茨城・取手双葉浸水1年
茨城県取手市双葉地区で大雨被害が発生し、3日で1年を迎えた。内水氾濫の早期把握と避難情報発信が課題となる中、県内では7市町村が水位監視カメラや浸水検知センサーを設置。このほか4市が設置を予定しており、導入の動きが広がる。県は「住民に早期避難を促す目安として有効」とし、未導入の県内市町村にも検討を促すとしている。 県によると、県内で内水氾濫で住宅被害の恐れがあるのは28市町村124地区。茨城新聞の調べでは、このうち5月末時点で水位監視カメラを設置したのは取手、石岡、稲敷、美浦の4市村で、浸水検知センサーは取手、常総、神栖、境の4市町が導入した。 取手市は県との実証実験により、双葉地区の3カ所にカメラを設置した。人工知能(AI)が水位を判断し、県や市に通知する。また、双葉地区の冠水しやすい道路5カ所にセンサーを設置。住民の避難発令や排水活動、通行止めの措置の目安として活用する。 石岡市は、高浜地区の恋瀬川と船だまりを監視するカメラと水位計を3月に設置した。船だまりを通じて川に雨水を排出する同地区では、昨年も増水で住宅の浸水被害が起きている。市は「インターネットを通じて住民も映像を確認できる」として、早期避難につながることを期待する。 国土交通省は2022年度から、センサーを無償で提供する「ワンコイン浸水センサ実証実験」を実施。これを受け、県内では常総、境の2市町がセンサーの運用を始めたほか、水戸、土浦、常陸太田の3市が本年度、実験に参加する。このほか、つくば市は独自にカメラを設置する予定。 センサーは用水路の壁面や道路脇の電柱などに取り付け、水が触れると電源が入ってメールなどで自治体などに通知する。同省は「カメラと比べて小型で設置しやすい。機器や維持費も低コストで寿命も長い」と利点を強調する。 予定も含め、カメラやセンサーを導入していないのは17市町。「河川カメラの水位を目安にする」「職員の巡回で対応する」「内水ハザードマップ作成を優先する」などを理由に挙げたほか、費用面を課題とした自治体もあった。 雨水の排出が追い付かず、水路やマンホールから水があふれて地域が水に漬かる内水氾濫は、発生場所の迅速な特定や避難情報を出すための設定が難しい。 昨年の被害を受け、学識経験者から意見を聴取。①カメラ・センサー設置②住民からの情報提供体制の構築③気象庁の雨量予測情報の活用④近隣地区の警戒情報などの活用⑤内水ハザードマップ作成-の五つの取り組みが、内水氾濫への備えや避難情報を発令する目安になるとして、県内市町村に導入の検討を求めた。 県防災・危機管理課は「取り組みを一つでも実施することが大切。複数を組み合わせることで、より効果的になる」と強調。カメラやセンサーを設置していない自治体には、他の対策を進めるよう促すとした。 ■取手に7割集中 昨年6月大雨、住宅被害 台風2号や梅雨前線の影響がもたらした昨年6月の大雨は、茨城県内に住宅浸水や土砂崩れなどの被害の爪痕を残した。 県のまとめによると、県内全体の住宅被害は全壊1件、半壊332件、床上浸水25件、床下浸水430件、一部破損17件の計805件。このうち約72%が取手市に集中し、双葉地区だけで床上浸水324件、床下浸水240件に及んだ。 人的被害は4市で計5人が軽傷を負った。道路の冠水は25市町村で901件に上った。 避難所は34市町138カ所で開設され、213世帯計364人が一時身を寄せた。避難指示は昨年6月2~4日にかけ、20市町村で7万2993世帯15万9762人を対象に発令。高齢者等避難も6市町村で2万2971世帯6万1200人に出された。
茨城新聞社