1935（昭和10）年当時の趣を伝える店内

　函館の老舗洋食店「五島軒」本店（函館市末広町）1階に4月27日、145年の歴史の中で初めてのカフェが開業する。入り口横のロビーを活用し、アフタヌーンティーやハンドドリップコーヒーなどを提供する。（函館経済新聞） 【写真】1日10組限定のアフタヌーンティーセット 　目玉は、1日10組限定のアフタヌーンティーセット（4,400円）。下段にはサンドイッチやカニクリームコロッケなどレストランの人気メニュー、中段にはアップルパイやスコーンなどの焼き菓子、上段にはケーキや季節のジュレなどを盛り付ける。ルピシア（ニセコ町）の紅茶やコーヒーなどの飲み物はお代わり自由。3日前までの予約制で、11時～13時、13時～15時、15時～17時のいずれかを選んで電話で申し込む。利用は2人以上。 　単品のドリンクメニューとして、ルピシアの紅茶各種（880円）、フランスの紅茶ブランド「マリアージュフレール」の紅茶「マルコポーロ」「ウェディングインペリアル」（以上1,430円）などを用意。昭和初期から同店と同じ函館西部地区でコーヒー豆の自家焙煎（ばいせん）と販売を行ってきた「十字屋食料品店」による五島軒オリジナルブレンドのコーヒー（935円）もハンドドリップで提供する。同じく昭和初期からコーヒー豆の焙煎と販売を手がける「函館美鈴」の豆を使ったブレンドコーヒー（660円）や、はこだてわいん（七飯町）が七飯町のリンゴで作ったリンゴジュース（770円）なども用意する。 　店名は「ブリューネ＆エリザベス」。ブリューネ（ブリュネ）は、江戸幕府の軍隊近代化を支援するため派遣されたフランス軍事顧問団の一員で、箱館戦争終結の直前まで榎本武揚率いる旧幕府勢力に参加していた人物。五島軒の初代料理長・五島英吉も旧幕府勢力の一員として箱館戦争を戦っていたことから、「函館とブリューネの歴史を後の世に伝えたい」と店名に取り入れた。併せて、ロシア料理店とフランス料理店としてのルーツを持つ同店にイギリスのアフタヌーンティー文化が新たに加わる意味を込め、女性名の「エリザベス」を冠した。 　新たにカフェとして営業を始めるロビーは、昨年まで宴会や結婚式の待合室として使っていた空間。現在の建物が完成した1935（昭和10）年当時はビリヤード台を置き、サロンとして活用していたという。織物で仕上げた壁や、大正時代にキリンビールから寄贈されたステンドグラスを埋め込んだバーカウンターなど、随所に当時の趣を残す。同店が昨年いっぱいで宴会や結婚式の取り扱いを終了したのに伴い、空きスペースとなっていた。 　「歴史的に価値のあるこの建物をどう使っていくべきなのか、これまで以上に函館に貢献できるより良い使い方ができないのか、建物の価値を問い直す意味で宴会を一度ストップし、五島軒が持つ資産を再活用する方法を探ってきた」と若山豪社長。「宴会を終了したことでロビーを活用できるようになり、新たなチャレンジができる。11時～18時の通し営業なので、レストランが営業していない時間にも五島軒でのくつろぎの時間を楽しんでもらえたら」と話す。「五島軒は函館の歴史を伝える店なので、市民の皆さまにも足を運んでほしい。『お客さまを連れていきたい場所』になれたら」とも。 　営業時間は11時～18時。火曜定休。