平成の重大誘拐事件 渋谷で女子大学生連れ去られ3億円要求 警視庁150年 124/150
平成18年6月26日午後0時半ごろ、東京都渋谷区の路上で大学4年の女性=当時(21)=が連れ去られた。女性の母は著名な美容整形外科医。犯人グループは身代金3億円を要求した。 女性を連れ去った車のナンバーを宅配ドライバーが目撃。夕方、警視庁の捜査1課特殊班やバイクで追尾する捜査班「トカゲ」が追跡を始めた。犯人は電話口に女性を出したが、携帯電話の位置情報が指したのは追跡中の車両。車内には2台の電話機の受話口と送話口を重ねる男2人しかいなかった。 捜査員らは確保を求めたが捜査本部は「人質の居場所が分からない。手を出すな」と指示。確保のタイミングを巡り激しいやり合いになった。27日未明、捜査1課は川崎市内で男2人を確保。市内のアジトが判明し、捜査員らが踏み込んだ。 扉を開けた瞬間、捜査員の目の前にいた男は銃の引き金を引いたが弾は出ず、捜査員にけがはなかった。 女性は無事に保護され、実行役2人に無期懲役、1人に懲役10年の判決が言い渡された。誘拐事件などでは、警察と報道各社が事件の発生や経過を報道しない「報道協定」を結ぶ。交流サイト(SNS)全盛のいま、人命優先のため捜査に協力する報道協定は可能なのか、今後の課題となっている。(内田優作)