無知の放流が「東京めだか」を絶滅状態に メダカの野生復帰はかなうのか?
今、純粋に「東京めだか」とみなされているのは、1989年に神代水生植物園(調布市)で採取されたメダカなどわずかであり、今はいずれも葛西臨海水族園などの施設で人手をかけて飼育されている。これらを採取した生息地でもすでに他地域のメダカの生息が確認されており、「いまや『野生絶滅』といっていい状況。自然下で確実に生息地だと言える場所はありません」と多田主任。 同協会では、いまだ発見されていない「東京めだか」の生息地の情報提供を募っているほか、残された「東京めだか」を絶やさないよう、世代を超えて飼育し続ける「累代飼育」に取り組んでいる。 数を増やして再放流すれば良いのではないかと思うが、簡単な話ではない。累代飼育に伴う近親交配により遺伝的に多様性が保てず、放流しても、たとえば同じ病気にかかった場合には壊滅的な打撃を受けることもあり得るなど、外の環境で生きるには弱くなっている可能性があるからだ。 それでも、多田主任は累代飼育の「東京めだか」を、いつの日かまた自然界に復帰させたいとの思いを抱く。「最終的な目標は野生復帰ですが、まずは調布からきたメダカたちを里帰りさせて、地域の人々に水槽で飼育してもらえないかと考えています」。飼育する場所を増やすのは、水族園での飼育にトラブルがあった時に備えてリスクを分散できるという点でもメリットがあるという。 (取材・文:具志堅浩二)