世界的ヒット番組の生みの親とイングランド7部クラブの幸せな関係
文 田島 大 んな中、華やかなプロの世界ではなくノンリーグのクラブに手を貸す著名人がいるという。 舞台はイングランド南東部のバッキンガムシャー州のチェシャムという街にあるチェシャム・ユナイテッドだ。これまで一度もプロリーグ(イングランド1~4部)に昇格したことはなく、現在はイングランド7部リーグに所属する平凡なセミプロチームだ。そんな、どこにでもあるような街クラブが注目を集めている。
ユニフォームの売上が激増
彼らを有名にしたのは『Taskmaster(タスクマスター)』と呼ばれる英国の大人気コメディ番組である。出演するコメディアンや著名人が機転を利かせてタスクをこなして争う、いわゆるリアリティ番組の一種で、今では100カ国近くで放送されているという。そんな人気番組を生み出したコメディアンのアレックス・ホーン(45歳)がチェシャム・ユナイテッドの役員を務めているのだ。 ホーンは居を構えている場所がチェシャム・ユナイテッドの本拠地のそばだったため、クラブの会長に誘われて2022年からクラブの役員に名を連ねている。最初はどんな役職かあまり考えずに引き受けたそうだが、彼のおかげもあってチームは飛躍を遂げることになった。今シーズンからユニフォームの胸スポンサーはホーンが手掛けるコメディ番組『Taskmaster』だ。昨季は30枚しか売れなかったユニフォームも、人気番組のおかげで今季は1200枚も売れており、2万ポンド(約380万円)の利益を生んだそうだ。 ホーンは名前を貸すだけではない。スタジアムに建てられているバーで定期的にコメディライブを開催するなど積極的にクラブの宣伝に努めている。「私の役目はクラブの知名度を上げること。名前だけ貸して何もしないなんてダサいからね」とホーンはスポーツ専門サイト『The Athletic』に語っている。 同氏を役員に誘ったピーター・ブラウン会長も「アメリカやオーストラリアの人までユニフォームを買ってくれる」と満足気だ。「それもすべて『Taskmaster』、そしてアレックス・ホーンのおかげさ。クラブは今まで経験したことのないほど認知度が高まった」