11月21日は「世界テレビ・デー」 とんねるず、井上陽水、ピンク・レディー……“テレビ”モチーフが楽曲に映す時代性
今日、11月21日は「世界テレビ・デー」である。1996年に国連総会で制定された日であり、平和・安全・経済・社会開発・文化交流の拡充などに関するテレビ番組の交流を促進する日とのことである。1996年当時の日本といえばCDの売り上げも全盛期、テレビドラマやバラエティ番組からヒット曲が生まれることが当たり前になりつつあった時期だ。 【写真】木梨憲武、キングカズ&レオナルドとお茶会へ テレビが音楽を発信するのと同じように、音楽もまたテレビというメディアについて様々な描き方をしてきた。本稿では“テレビ”をモチーフにしたいくつかの楽曲を取り上げ、その表現について考えてみたい。 まず取り上げたいのが2003年にリリースされたピンク・レディーの「テレビが来た日」。当時、五度目の再結成だったピンク・レディーのCDシングルであり、『みんなのうた』(NHK)でオンエアされていた。作詞は阿久悠、作編曲は都倉俊一という盤石の布陣で作られたこの曲は、まさにその題通り、家にテレビが初めてやってきた日の高揚感を〈テレビが来たぞ やったー!〉と楽しげに歌っている。 現在放送中のドラマ『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)は1955年から現代までを舞台にした作品で、第3話では当時一般家庭ではまだ珍しかったテレビを渇望する少年の姿が描かれていた。作詞を務めた阿久悠は1937年生まれで、テレビが巻き起こす熱狂をリアルタイムで体験しただろう。またピンク・レディーの2人も1957、1958年生まれであり、1960年代に一般家庭に普及していくテレビに魅了された世代。家庭におけるエンターテインメントの最高峰となりゆくテレビの原初の雄姿を記録した貴重な1曲である。 一般家庭に広まり、カラー放送が始まると、テレビはさらに勢いを増す。ライターの稲田豊史氏曰く「娯楽の王様にして、マスメディアの頂点」(※1)となった1980年代のテレビにおいて、強い存在感を示したのがとんねるずであった。彼らは積極的に音楽活動も行い、番組発信でもヒット曲を飛ばすなど音楽とテレビの両方で成功を収めた存在だと言える。 とんねるずは1994年に「テレビ~時々の神よ~」という楽曲を発表。シングル『ガニ』のカップリングとしてリリースされたこの曲は、〈テレビを見終わって/なんだか 空しくなる/確かに笑ってたけれど/何を笑っていたのか?〉という歌い出しで始まる。作詞は秋元康で、彼もまたテレビ業界においても名を馳せた人物だが、そこに身を置きながらもどこか空疎さを感じていたことが窺える歌詞である。『とんねるずのみなさんのおかげです。』(フジテレビ系)のEDテーマとして番組終了時にこの曲が流れていた点も、実に批評的だ。バブル崩壊後、不安定な社会に対して元気を増していくテレビのギャップを見事に捉えた1曲だろう。 2002年に「テレビジョン」という楽曲を発表したのは井上陽水である。電子音が轟き、硬質なビートと粘り気のある歌唱がインパクトを残す楽曲であり、不穏なムードが漂う。歌詞はある種痛烈なテレビ批判とも取れる内容で、2000年代以降少しずつ勢いを失っていくテレビの行く末を預言しているかのようだ。元よりさほどテレビ番組への出演に積極的ではなかった井上だからこそ、絶妙に距離を置いた目線でこのような楽曲を作ることができたのだろう。