向井理「“芝居が上手い”と言われないように気をつけている」その理由とは
現在放送中のドラマ『パリピ孔明』で諸葛孔明役を演じ、大きな話題となっている向井理さん。しかし、舞台『リムジン』で魅せるのは孔明とは真逆のキャラクター。もともと本作が上演される予定だったのは2020年。新型コロナウイルスの影響で延期となったが、この度ついに満を持してその幕が上がる。主演を務める向井さんに本作への思い、そして“演じる”ということについて全3回にわたってお話を伺った。 (写真)40代、向井理さん撮りおろしショットを見る!
向井さんにとっての“いい芝居”とは
――お話を伺っていると、役だけでなく、演劇そのものに対しても、ものすごくストイックに向き合っているのが伝わってきます。 その都度いいお芝居を見せていかなきゃ、次につながらないじゃないですか。「あんな下手な演技は二度と見たくない」なんて思われたら、仕事として続けていけなくなるわけで。だからといって誰かに媚びるつもりも、あざとくウケを狙うつもりもないけれど、お客さんに「おもしろかった」と言ってもらうために日々研鑽を積むのは、当たり前に必要とされることだと思います。 ――向井さんにとって、いい芝居ってどんなものですか? 何か心に引っ掛かりを残すもの、ですかね。別に、ポジティブな感情ばかりでなくてもいいんです。観ていて気持ち悪いとか、胸がざわざわするとか、何かしらのかたちで惹きつけたい。そのために必要なのは、自分が役者としてどうありたいかではなく、その作品において自分が何を求められているのか、どういうポジションにあるのかを明確にしておくことだと思います。ひとりよがりな演技で自分だけ楽しくなっちゃうと、作品全体のクオリティを下げてしまいますしね。かといって、個性が埋没してもいけないし……。 ――難しいですね。 今作においても、模索中です。ただ、公演中はずっと僕の中にうしろめたさや気まずさが残り続けるだろうし、それがお客さんにも伝わっていくんじゃないかなと思います。あと気をつけているのは、「芝居が上手い」と言われないようにすること。 ――え、どうしてですか。 上手いというのは、テクニックのことじゃないですか。それは、ある程度学べば身につくし、この世界には演技の上手い人なんて数えきれないほどいる。でも、人の心に残る芝居って、上手さとはまた別の次元にある気がするんです。だから、表面的な技巧に走らないよう、上手いなんて言われたらおしまいだ、と自分に言い聞かせていますね。