産休明けのシングルマザーが「マタハラ」で処分を受けた“理不尽すぎる理由”。妊活女性に恨みを買い|ドラマ『不適切にもほどがある!』
3月22日に9話が放送された『不適切にもほどがある!』(TBS系、金曜よる10時~)。簡単に“○○ハラスメント”と他者を糾弾(きゅうだん)できてしまう現在の“可笑しさ”を感じる内容だった。
シンママが後輩から「パワハラ上司」認定されるまで
序盤、テレビ局・EBSテレビのカウンセラーを務める小川市郎(阿部サダヲ)の前に、市郎の孫・犬島渚(仲里依紗)の後輩・杉山ひろ美(円井わん)が現れる。社内報『E-MAGA』に載った渚の取材記事の中に「私の周りにも計画的に妊活してる女性社員がいますけど」と語っており、ひろ美はこの発言を持ち出し「私が妊活していること、犬島先輩にしか打ち明けてないから」「これってアウティングですよね!?」と主張。(※アウティング=本人の了承を得ずに秘密を言い広めること) 後で一郎が渚に確認すると、ひろ美を指して発言したわけではないと釈明する。可愛がっていた後輩からのまさかの“裏切り”に戸惑う渚だが、そこからますます困惑する事態に発展。社内で同期の羽村由貴(ファーストサマーウイカ)と会った際、ひろ美はSNSで妊活レシピを投稿したり、妊活を理由に過去に無断欠勤や遅刻を繰り返したりなど、ひろ美が妊活していたことは周知の事実であることを聞かされる。 ひろ美の言動に不信感を募らせる渚。ある日会議でスケジュール調整をしている際、事あるごとに妊活を理由にスケジュールNGを口にするひろ美に助け舟を出したつもりで「だったらその週はいないものとしてシフトを組んでおくから、来れたら顔出して」という。しかし、この“いないもの”と言われたことに傷ついたらしく、渚の発言はプレマタニティハラスメントに該当するとして1か月間の謹慎処分を言い渡される。
何でもかんでもハラスメント認定される時代
渚の“いないもの”という表現は善意とわかっていてもキツい言葉であり、100%落ち度がなかったかと言えばその判断は難しい。とはいえ、ひろ美は自身の妊活が上手くいかない状況が続く中、産休から復帰しシングルマザーとして子育てしながらも仕事に取り組む渚の姿に嫉妬心を覚えていた様子。渚を狙い撃ちしたようなハラスメント告発だったように思う。それでも、コンプライアンスに厳しい昨今、会社としても“勇気ある声”を無下にはできない。渚に謹慎処分を下すことは“落としどころ”だったのかもしれない。 謹慎処分を下された場で渚は「杉山さんに伝えてください」と口にして、「私は成功者でもなんでもないし、今も戦ってて、負けてばっかで、誰かに助けを求めないと、働けないワーママです」「今回のことで妊活に後ろ向きにならないでほしいし、言葉足らずだけど、私あなたの味方だから」と目に涙を浮かべながらも決してひろ美を責めなかった。だからこそ、直接ひろ美に弁明できず、一方的に好きな仕事を奪われる姿は虚しさしかない。 涙ぐむ渚を見て、何でもかんでもハラスメントと括ってしまう風潮、さらには加害者の言い分が蔑ろにされやすい現状に対する違和感も覚えざるを得ない。そして何より、ハラスメント被害者の登場人物を少しでも批判が向くように表現すると、正義感の強い人から「被害者の気持ちを無視するのか?」といった声が簡単に寄せられる現代社会、あえてハラスメント被害者に疑問を向ける展開にした制作陣のガッツを感じずにはいられなかった。