宇宙人が発したような火星からの信号、解読に成功 次は意味の解釈
(CNN) もし地球の天文台が宇宙からの信号を拾ったなら、地球外からのメッセージを解読するためには総力を挙げて取り組む必要がある――。地球外生命体の発見を目指す非営利団体SETI協会の手掛けるアートプロジェクトはこうしたシナリオを想定したもの。1年あまり前に宇宙から送信されたメッセージがこのほど、民間の科学者によって解明された。次の段階は意味の解釈となりそうだ。 写真特集:火星で見つかった「生命の痕跡」!? 欧州宇宙機関(ESA)は先月、火星探査機「トレース・ガス・オービター(TGO)」が発した信号について、ある親子が1年がかりで解読に成功したと発表した。 TGOは2023年5月、宇宙人が発したかのようなメッセージを含む信号を発信した。地球上の三つの天文台がこの信号を受信してローデータをネット上に公開。世界中の市民科学者がこの信号の解読に取り組んだ。 ESAは、ケン・チャフィンさんと娘のケリさんが1年近くメッセージの解読に取り組んだ結果、今年6月に答えを解き明かしたと発表した。チャフィン親子はCNNに対し、解読には何千時間も要し、さまざまなアイデアを試したり、コンピューターで数学的シミュレーションを実行したりしたと語った。 黒い背景に白いピクセルの集合体のように見える視覚化されたメッセージは、生命の構成要素であるアミノ酸を表す五つの要素で構成されている。メッセージは静止しているのではなく動いており、その配置は約10分の1秒だけ表示される。このプロジェクトの設計者は、アミノ酸が意図されたメッセージであることを確認したが、その解釈をめぐっては余地を残している。 市民科学者たちは現在、この宇宙の謎に隠された意味の解明に取り組んでいる。これまでのところプロジェクトに関わる科学者らは、アミノ酸が何を表しているか決定し、合意するにいたっていない。
宇宙の謎を解読
地球外生命体の発見を目指す非営利団体SETI協会のアーティスト・イン・レジデンス、ダニエラ・デ・パウリス氏は、国際的な科学者らとともに「宇宙のサイン」と呼ばれるこのプロジェクトを設計した。 信号は火星から地球に向けて送信され、16分後にカリフォルニア州北部にあるアレン・テレスコープ・アレイ、グリーン・バンク望遠鏡、イタリア・ボローニャ近郊のメディチーナ電波天文台によって受信された。その後、市民科学者が対話アプリ「ディスコード」のグローバルチャットで通信し、他のデータと絡み合ったローデータをTGOから抽出した。データを抽出して視覚化するまでに約10日かかったが、メッセージが何であるかを解読するにはさらなる粘り強さが必要だった。 ディスコードの市民科学者コミュニティーはローデータから取得された元の画像を「スターマップ」と呼んでいた。ケン・チャフィンさんは、このスターマップにセルオートマトンシミュレーションを実行することで、最終的にアミノ酸の画像の生成に成功した。 デ・パウリス氏はこのプロジェクトの目標について、シミュレーションを現実世界で起こり得る状況にできるだけ近づけることだと述べた。そのため、チャフィン親子から答えが提示されるまで、プロジェクト開発者らは肯定も否定もせず、一切の支援を提供しなかった。 「宇宙人の文明からメッセージを受け取ったとしても、フィードバックはないだろうという発想だ。だから、自分たちで意味を考え出さなければならない」(デ・パウリス氏) この信号は、理想的な環境下で地球外からのメッセージを受信した場合の状況を表している。比較的近い火星から発せられ、深宇宙から届くものよりも強い信号だったため、複数の望遠鏡がこの信号を捉えた。実際の信号を検知できるのは一つだけの可能性がある。 プロジェクトチームは意図的に複雑なメッセージを作成したため、一部のチームメンバーは解読に数週間、あるいは数年かかると予想していた。永遠に解読されないかもしれないと言っている人もいたという。「そのため、どれくらい時間がかかるかまったくわからなかった。私たちは本当に大きなリスクを負っていた」(デ・パウリス氏) デ・パウリス氏は、メッセージが解読された今、次の段階はそれが何を意味するのか、そしてなぜ別の文明がそれを送ったのかを解明することだと語った。