「止まっていた時間」が再び動き出したキューバ・ハバナの街を歩く
今年の冬、初めてキューバを訪れる機会があった。歴史のあるカラフルな街並みに、今も現役で走り続けるクラシックカー。こんなレトロなイメージの首都ハバナを、以前から訪れてみたいと思っていた。特に近年この国は大きく変わりつつあると聞いていたから、「古き良きキューバ」がなくなる前に見ておきたかった。 数日間足らずの短い滞在だったが、ハバナは期待を裏切らない美しい街だった。反面、市場や店の棚はいつもガラガラで、物資や食料品不足は深刻。裏通りを歩けば、今にも崩れそうな建物が並び、貧しさが滲み出る。
「キューバは時間が止まったままの世界」 少女の頃、家族と共にアメリカに亡命したキューバ人歌手のグロリア・エステファンの言葉だ。キューバを社会主義に変えた革命の指導者フェデル・カストロへの批判を込め、「国が発展できず停滞したまま」という意味だった。 しかしフェデルの死後、時代の波に逆らえずキューバも変わり出した。昨年の米国との国交再開で激増した観光客や、以前は高級ホテルでしかアクセスできなかったインターネットが、路上でも繋がるようになるなど、ここ1、2年での変化は著しい。 良くも悪くも「時間が止まったままの世界」で、再び時間は動き出していた。 (文・写真:高橋邦典 2017年2月撮影) ※この記事はフォトジャーナル<変貌する社会主義国キューバ>- 高橋邦典 第52回」の一部を抜粋したものです。