厳しい財源で工夫凝らす タコさん滑り台発祥の地・足立区の公園づくりとは
苦肉の策でドライ型ミスト機設置した西新井さかえ公園
じゃぶじゃぶ池を設置するスペースがない、また設置しても需要が薄いと判断した西新井さかえ公園には、じゃぶじゃぶ池の代わりに、昨年から水を霧にして噴射するドライ型ミスト機を設置しています。 「ドライ型ミスト機を導入した背景には、じゃぶじゃぶ池と比較して設置・メンテナンス費用が低く抑えられるというメリットがあったからです。また、都環境局が『クールスポット創出支援事業』を推進しており、その補助金が出ることも導入の大きな理由のひとつでした」(同)。 ドライ型ミスト機の設置は苦肉の策でしたが、結果的に西新井さかえ公園は物珍しい公園として注目を集めました。
限度ある予算で工夫、メリハリつけて特色ある公園づくりに
足立区が公園づくりに力を入れるようになったのは、2011(平成23)年に「あだち 公園☆いきいきプラン」を策定したことがきっかけでした。同プランには、にぎわいのある公園・やすらぎの公園といったように特色ある公園づくりに取り組むことが盛り込まれていました。 しかし、にぎわいのある公園・やすらぎの公園をつくるにはそれなりに予算が必要です。公園を整備することで住環境が整えられるとはいっても、予算には限度もあります。 2013年からモデル地域を3カ所選定。選定されたエリアの町内会・学校関係者・まちづくり関係者などと意見交換し、効率的で魅力ある公園を整備するパークイノベーション事業として本格的に公園づくりが始まったのです。 「厳しい財政事情を踏まえ、足立区ではメリハリのある公園づくりを目指すことになりました。新しい遊具を設置することが財政的に難しいなら、既存の遊具の改修時にこれまでの定番だった色から奇抜なカラーリングに変更してみたり、遊具の配置を大胆に変えてみるといった試行錯誤を繰り返しました。そうした一工夫を凝らすだけでも、公園には子供たちが集まってくることがわかりました」(同)。
全国どこも似たりよったり、“金太郎飴”化した公園 都市公園法改正で独自色が出せるように
足立区に限らず、日本全国の公園は都市公園法に則って施設の配置や運営・管理が決められていました。そうした法律の縛りによって、どこの公園も似たようなつくりになり、公園は金太郎飴化していたのです。 ところが1993(平成5)年に都市公園法が改正。同法の改正で、公園に必ず設置しなければならない遊具となっていた滑り台・ブランコ・砂場の3点セットの義務付けが廃止されました。これによって行政が公園づくりに独自色を打ち出しやすい環境になったのです。 「足立区はタコさん滑り台発祥の地とも言われており、1965(昭和40)年に新西新井公園に設置されたタコさん滑り台が現存しています。区内には11体のタコさん滑り台と1体のイカさん滑り台もあります。こうしたタコさん滑り台は足立区の公園のトレードマークにもなっていて、子供たちにはとても人気がありますが、これら11体のタコさん滑り台はすべて異なった形になっています。同じタコさん滑り台でも、工夫を凝らしています」(同)。 公園は子供の遊び場として機能していますが、高齢者や幼児を連れた若いパパ・ママも利用します。そうした多くの人が利用することも想定し、足立区は子供たちが思いっきりボール遊びをできるようにボール遊び場をフェンスで囲ったり、幼児の遊び場もゾーニングしたりして安全を確保しています。ちょっとした工夫で、足立区の公園は生まれ変わったのです。 足立区のパークイノベーションのような、工夫を凝らして公園を魅力的な空間に変えようとする取り組みは、ほかの自治体でも始まっています。 小川裕夫=フリーランスライター