「残高4419円→6億円になった男性」「206億円を“山分け”した村」…“宝くじ億り人”を探しまくった記者が見た当せん者の辿った道と笑顔
行動経済学から見た宝くじ
ほとんどの人は当たることのない宝くじ。それでもなぜ大勢の人が買うのか? 行動経済学の観点から専門家に聞いた。 「私たちは脳の中で1%と0.1%をほとんど区別ができない」 こう話すのは経済学者の中川功一氏。 さらに「不確実性に直面した状況における人間の意思決定行動という形で、経済学・心理学・行動科学全般の中で議論されている。例えば、『1%の確率で当たる』を『10人に1人ぐらいは当たる』などと誤解し、少ない確率を高く評価しすぎてしまう傾向がある。また、『自信過剰理論』というのがあり、根拠なく『自分は1%に入るんだ』という無根拠な自信が発生する。脳はイメージできないことは正しく評価できない。ある種の犯罪行為についても同じことが言える。懲役20年というものがどれくらいの罪になるのか、どれくらいのことなのかイメージできないので、罪の意識を感じられず、罪を犯したり意思決定上のミスを犯してしまう」と説明した。 当たるという謎の自信で購入してしまう。依存症にもなりかねない脳の特性。人は宝くじとどう付き合えば良いのか? 中川氏は教育の重要性を指摘する。以前より日本は金融リテラシー・統計的リテラシーが不足しているとされており、正しく確率を認識できていない傾向があるという。 さらに、宝くじはギャンブル依存症とも関係があるという。 久里浜医療センターの松下幸生院長は「特にキャリーオーバーで賞金が積み上がるタイプのものはギャンブル性が高い」「借金を背負った方が“一発逆転”を狙うことは危険」と警鐘を鳴らしている。 とはいえ、日本の宝くじは「ある意味お行儀が良い」という。 なぜなら、宝くじは賞金を大きくすると売れることが分かっているのだが、日本の賞金はけっして大きくないからだ。 日本はMEGA BIGの1等は12億円が最高で、賞金総額は発売総額の50%以下(原則)。一等最高額は1口の250万倍、キャリーオーバーのある場合では500万倍以下と定められている。これに対して、アメリカのパワーボールでは1等20億4000万ドル(約2970億円)で1口2ドル(約291円)の10億2000万倍が出たことがある。
「宝くじと人間」とは
宝くじを追いかけてきた大牟田さん。最後に取材を通して感じたことを話してくれた。 「私たちの人生は、どんな国のどんな家庭に生まれるかに始まり、どんな人と出会うかなど、様々な運に左右されている。とはいえ、格差社会が固定化されて、個人がいくら努力しても打開は難しく『もう運にすがるしかない』と世界中で高額宝くじが売れているのだとしたら、社会はいささか不健全な方向にあるのではないか」 (ABEMA GLOBE)
ABEMA TIMES編集部