マキロイが行った赤杭の“対岸”からの救済処置 2019年に廃止されたルールなのになぜ可能だった?
他の救済が不可能なホールでローカルルールを設けられる
しかし、この「対岸の救済」は19年のルール改訂で廃止されました。 その理由を同改訂に先立って日本ゴルフ協会が発表した「解説」には、「対岸での救済は複雑な選択肢で、多くのプレーヤーはその選択肢をよく知らず、めったに使用することがありません」とあります。 つまり、もともと選択される例が少なかったためとしています。 加えて同解説では、「対岸の救済」は後方線上の救済やラテラル救済のどちらも実現可能ではなく、プレーヤーの選択肢が「ストロークと距離の救済」だけになるケースにおいて、追加の選択肢を設けることが目的でしたが、現実には、(2)や(3)の救済が受けられる状況でも、「対岸の救済」が使われることがあり、その結果、ときには有利になり過ぎる、不必要な選択肢になっていました、と説明されています。 つまり、「対岸の救済」はプレーヤーにとって、ときに必要以上に有利な救済になるケースがあったので廃止されたのでした。 ただし、同改訂では、「他の救済の選択肢を受けることが不可能であると考えるホールで対岸での救済を許すローカルルールを採用することもできます」として、ローカルルールで「対岸の救済」を設けることを認めています。 それが「ローカルルールひな型 B-2.1」で、そこには「その球がレッドペナルティーエリアの縁を最後に横切った場合、1罰打の追加の選択肢として、プレーヤーはそのペナルティーエリアの反対側にドロップすることができる」として、エントリーポイントからホールまでの距離と等距離の、反対側のレッドペナルティーエリアの縁の地点を基点に、2クラブレングスの救済エリアにドロップすることができると規定されています。 マキロイが小川に打ち込んだレッドペナルティーエリアが、まさにこのローカルルール適用のエリアだったのです。後方線上にも、エントリーポイントの周辺にも、適当な救済エリアは見当たりません。 結果、マキロイは1罰打で、エントリーポイントとは反対側の小川の右岸に救済エリアを決定し、そのエリア内にあるフェアウェイにドロップ。そして、第3打をプレーしたのでした。
小関洋一