為替・物価不安定で韓銀は進退両難…利下げ見送りか
トランプ再執権時代が開かれ、韓国銀行(韓銀)が進退両難の状況を迎えた。「トランプ政策リスク」が浮上し、ウォン安ドル高、物価上昇(インフレーション)懸念、米通貨政策変化の可能性など多様な暗礁が予想されるからだ。韓銀は先月3年2カ月ぶりに引き下げに金利経路を転換したが、金融市場が不安定になれば積極的に通貨政策を展開するのが難しくなる。今年最後の金融通貨委員会会議が開かれる28日に「据え置き」を選択した後にも、追加の利下げ時点はさらに遅れる可能性があるという見方が出てくる理由だ。 トランプ氏の当選に最も早く反応したのが為替レートだ。外国為替市場で韓国ウォンは7日午後3時30分基準で前日より0.4ウォン値下がりした1ドル=1396.6ウォンで取引された。一時は1ドル=1404.38ウォンまでウォン安ドル高が進み、市場の心理的マジノ線となる1ドル=1400ウォンを超えた。取引時間中に1ドル=1400ウォン台となったのは4月16日以来およそ7カ月ぶり。多くの専門家はウォン安ドル高がしばらく続くと予想している。NH農協銀行のイ・ナクウォン専門委員は「1ドル=1420ウォンまでウォン安ドル高の可能性を開いておくべき」と話した。 ウォン安ドル高はトランプ発スーパードルの影響だ。トランプ政権当時の2017年のように関税障壁を築く「米国優先主義」を予想して米ドルが値上がりしている。ウォールストリートジャーナル(WSJ)によると、主要6カ国通貨に対する米ドルの価値を示すドルインデックスは先月初めの101から1カ月間で105.09に上昇した。 ドル高が進む時期に韓銀が政策金利を引き下げれば相対的にウォン安がさらに進み、輸入物価を引き上げる。輸入物価の上昇は、1%台に落ち着いた消費者物価をまた刺激するおそれがあるという点も韓銀の通貨政策を妨害する要因だ。 最近、李昌鏞(イ・チャンヨン)韓銀総裁も金利を決定をする際には為替レート変数を考慮すると伝えた。李総裁は「ウォン安ドル高が進んでいてペースも速い」とし「10月の会議で考慮要因でなかった為替レートが考慮要因に入ってきた」と述べた。 米国の政策金利引き下げの動きが遅くなるという見方も韓銀の金利決定を悩ませる要因だ。一般的に米国との政策金利格差が広がれば投資家が離脱する傾向にあり、新興国は米国より先に利下げしたり利下げペースを速めたりしない。 米連邦準備制度理事会(FRB)の12月の政策金利引き下げ予想は弱まっている。トランプ氏の高関税と財政拡大公約はインフレを招きかねないからだ。西江大のイ・ヨンス経済学科教授は「トランプ氏の全方向的な関税導入は米国の輸入物価を高め、財政拡大で国債発行が増えれば市場金利は上がるしかない」とし「物価の負担が増えれば年内2回の利下げ回数は1回に減る可能性がある」と話した。 トランプリスクで韓銀の通貨政策余力が減れば年末の国内内需市場が打撃を受けるという意見もある。LG経営研究院のチョ・ヨンム研究委員は「年末に輸出が鈍化する状況で消費の回復など内需市場が支えなければいけない」とし「しかし(韓銀の)利下げがますます難しくなれば内需不振は加重する可能性がある」と見なした。