アマゾン創業者ジェフ・ベゾスを育てた母の知られざる人生 高校生で妊娠、働きながら育児と学業を両立
アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス。2023年フォーブスの世界長者番付で3位にランクインし、1140億ドル(約16兆1900億円)もの資産を有する大富豪として知られる人物だ。一代で巨大企業をつくり出した彼は常に注目を集めるが、その成功の影にある母親の存在も忘れてはいけない。 【動画】貴重なアマゾン最初のオフィスの映像。自宅の小さなガレージを使っていた
高校生で妊娠、40歳で大学を卒業
ジェフ・ベゾスの母、ジャクリン・ベゾスが2019年のケンブリッジ大学の卒業式で行った演説の中から、彼女のストーリーを紹介しよう。 ジャクリンが息子のジェフを妊娠し、結婚したのは、まだ高校生のときだった。学校側は彼女の妊娠に対して「高校教育を修了できないだろう」と、暗に退学を示した。彼女は粘り強く交渉し、出産後も学校への復帰を認めてもらったそうだが、卒業式には出席できないなど、厳しい環境下で過ごしたという。 ジェフが1歳6カ月になったとき、夫と離婚。高校卒業後は秘書の仕事に就き、月給190ドル(約27,000円)を稼いだという。しかし、ジャクリンは仕事をしながらも、「学校で勉強したい」という願望はもち続け、夜間学校に入学。ジェフを連れて学校にも通った。 この夜間学校で出会ったのが、現在の夫であるマイク・ベゾスだ。マイクはキューバからの難民で、彼の仕事の関係で途中で引っ越しせざるを得なくなり、結局ジャクリンは夜間学校を卒業することはかなわなかったのだ。 だが彼女は「学びたい」という想いをあきらめず、大学にチャレンジ。結局、高校を卒業してから20年以上経った40歳の年に、セント・エリザベス・カレッジを卒業した。高校生で妊娠・出産し、働きながらジェフを育てつつ大学に通い、最後には卒業までしたという根性の持ち主なのだ。
アマゾン創業時に3500万円もの出資をした
そんなジャクリンの息子ジェフは、1995年にオンライン書店「アマゾン」を立ち上げた。このとき、24万5573ドル(約3480万円)を出資したのが、ジャクリンとマイクだった。まだインターネットサービスがそこまで広がっていない中での高額出資は、きっと大きな賭けだったに違いない。 当初はジェフ自身、「失敗する可能性」も感じていたという。もしアマゾンがうまくいかなければ別の道を探そうと考えていたのかもしれない。だが、それからのアマゾンの大成は、多くの人がご存知の通りだ。 約30年前に出資した24万5573ドルは、現在では8億5800万ドル(約1200億円)と、約3500倍もの価値になっていると言われる。 一代で世界的な大企業をつくり上げたジェフ・ベゾスは、母ジャクリンの不屈の精神を受け継ぎ、新しいことに恐れずに挑むチャレンジ精神を身につけていたのだろう。ジェフは「私は無条件に愛を与えてくれる人が人生にたくさんいるという、幸運に恵まれた」と語っている。
文:佐藤まきこ