【大学野球】青学大が日大に劇的なサヨナラ勝利 指揮官からの信頼高い渡部海
バットでチームに貢献したい思い
同じ過ちは、繰り返さない。渡部は智弁和歌山高時代の恩師・中谷仁監督からの言葉を思い出した。「ゲーム中に反省しない。メンタルの浮き沈みなく、同じことをやり続ける」。渡部には毎日、積み上げた練習量が支えにあった。なおも無死三塁のピンチも、気持ちを切り替え、好リードで導き、追加点を許さなかった。青学大は5回表、2本の適時打で逆転。2対1で、2年連続日本一を遂げた。 「アイツのミスだから、取り返せた。渡部に散々、助けられてきました。無言のメッセージで『救ってたろう』というムードになったんです」。安藤監督の信頼はさらに深まった。 ギリギリの勝負。正捕手・渡部のストレスは想像以上だった。閉幕から数日後、額にできものができ、目元も腫れてきた。大学日本代表候補に選ばれ、最終選考合宿初日に球場へ向かうもヘルメット、帽子もかぶれず、練習に参加できなかった。最終日(3日目)の合流を目指したが、回復のメドが立たず、無念の辞退。「実力で落ちたわけではないので、悔しい。来年は選ばれるように結果を残したい」。この秋は「自分が打てば、得点力が上がる」と、守りに加えて、バットでもチームに貢献したい思いが強かった。 もう一つの発奮材料があった。日大1回戦で死球を受けた四番・西川史礁(4年・龍谷大平安高)が、同2回戦を欠場していた。 「西川さんがいないことも想定して、大学日本代表の海外遠征(チェコ、オランダ)で不在のときも練習していました。『全員戦力』という形で取り組んできましたので、気にすることなく、全員で勝ちにいきました」
5対4で迎えた9回裏二死満塁。日大は1回戦で先発したエース右腕・市川祐(3年・関東第一高)を投入してきた。逃げ切りに、相手も必死だった。右打席に立った渡部は、1ボール1ストライクからの3球目のフォークを、左翼線に落とした。2人の走者が生還し6対5、劇的なサヨナラ勝ちを収めた。 「逆転した後に逆転され、すごく反省していた。チャンスで決められたので良かったです」 自身の殊勲打を喜ぶ前に、ディフェンスの要・捕手としては、5失点を猛省するあたり、渡部は生粋の捕手である。智弁和歌山高では、2年夏の甲子園で全国制覇。安藤監督は当時から献身的なプレーに惚れ込み、何度も同校グラウンドに足を運んだ。3年時には高校日本代表でプレー。プロ志望届を提出していれば、指名は間違いないと言われていたが、2年冬の段階で進学を選択していた。熱血漢・安藤監督の下で「大学日本一」と、4年後の「ドラフト上位指名」を目指したのである。 渡部はすでに2度の全日本大学選手権制覇を経験したが「4年連続優勝を目指す」と、目標設定は高い。青学大は開幕カードの国学院大に続き、日大戦で今季2つ目の勝ち点挙げた。まずはこの秋、リーグ4連覇と、昨年、目前で逃した明治神宮大会で頂点に立ち、悲願の年間タイトル4冠を狙っていく。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール