2季目サンウルブズに参戦の田中&松島は最下位チームを変えられるか
さらに田中が示しそうなのは世界最高クラスの舞台の厳しさだ。 田中は以前、ハイランダーズで味わったスーパーラグビープレーヤーの姿勢をこう語ったことがある。 「彼らのラグビーに賭ける思いも見える。それを知れて良かったという部分と、まぁ、知らなかった方が良かったかなと思ってしまう部分もあります」 田中が最も存在感をアピールした参戦初年度(2013年度)、定位置を争っていたスミスの表情は険しかったという。スミスが調子を取り戻していた翌年度(2014年度)から先、田中の出番はやや限られるようになった。人呼んで「フミさん」はこうも続けた。 「ただ、これを機会に自分がショボいと知れたのは良かったです。後悔はしてないですね」 スーパーラグビーの、「夢舞台」とは違った側面を肌で知る。国内所属先のパナソニックでも、仲間の弛緩を逃さぬ目と声で練習の緊張感を保っている。堀江ら初年度のサンウルブズに加わった面子とともに、今回加わった15名の未経験者をフォローアップして欲しいところだ。 松島も松島で、そんな田中の代弁者の1人となろう。 イングランド大会時の松島は、チームに厳しい注意を重ねてきた田中にとっての希少な理解者でもあった。そのことは当の本人も認めていて、当時の田中を「ほとんど僕と一緒にいた。皆とわいわいする感じじゃなかったですね」と述懐したことがある。 「僕も(田中と)同じ思いでしたし、フミさんみたいにはっきり言える人がいてよかったんじゃないかと思います。そういう人がいて選手の意識が変わったところもある。存在は大きい。練習でも、ミーティングでも、『このままでいいのか』と。もし深く考えていない選手がいたとしたら、たぶん、その選手の考えが変わった」 こんな調子で、人の息づかいを客観視するのが松島という選手なのだ。現在は、当時よりもキャリア組に近づいている格好だ。田中らが発したフレーズの真意を、付き合いの浅い若手選手に翻訳する立場も担えそうだ。オフのティータイムにも、遠征先のホテルの2人部屋にも、この人の出番はある。 今度のサンウルブズの母体となる日本代表にあって、田中は「僕がいらんことを言わんでいい」と笑っている。現メンバーの戦術理解への意欲や練習中の積極的なコミュニケーションなどに、ある程度は満足しているようだ。 しかし、何かの拍子で事態が悪化した場合、例の緊張感が請われてくる。その折、松島のような理解者がいれば鬼に金棒というわけだ。松島曰く「(田中の直言と同内容の言葉を)やんわり言う人」という堀江は、こうだ。 「自分たちのやることを、しっかりと理解してやっていきたい」 チームは2月初旬に集合し、同月25日に秩父宮ラグビー場で優勝チーム、ハリケーンズ(ニュージーランド)との開幕節を見据える。 (文責・向風見也/ラグビーライター)