”かさ増し”した29億円を見せて「その土地を買わせてください」…取引当日に「突然現れた男」を信じてしまう”地面師”のヤバすぎる手口
驚きの説得方法
では、北田たちは持ち主の西方をどう説得したのか、といえば、あくまでプリエが元NTT寮と仙台の山林をセットで買い、それを再開発するかのような話をしていたようだ。 西方は、両方の物件を少なくとも20億円以上で売りたいと要望してきたので、プリエにその資金力があるように見せかけなければならない。もとよりペーパーカンパニーのプリエにそんな資金力があるはずはないが、地主に対する偽装工作について、津波が北田たちの手口を明かした。 「あとでわかったのですけど、西方さんに対し北田らは『プリエには仙台の山林と世田谷の建物(元NTT寮)を一括で買える現金があるから大丈夫だ』と説明していたようです。プリエの銀行口座にある29億円の残高を見せ、『ここにこれだけあるから安心してください』と。 ところが実は、その29億円は北田が小切手を使って入金したもので、使えない見せ金だったんです」 小切手や手形を駆使したこうした見せ金もまた、詐欺師の得意の手口だ。 経営難に陥っている会社を見つけてきて、そこに手形を振り出させる。巷間、その手形は“ポン手”や“クズ小切手”と呼ばれ、手形交換所に回すと不渡り確実な代物である。つまり銀行に手形で入金しても現金として引き出すことができない。しかし形の上ではその分の預金が積み上がったことになる。それを利用するわけだ。それなら見破る方法があるように思える。 ところが、現実には津波側の司法書士でさえ、プリエの預金残高を見せられて信用してしまった。そこにも巧妙な仕掛けがある。 『巧妙な『地面師詐欺』も“ある書類”を読めば一発で見抜ける!…プロの司法書士でさえ見落としがちな“ある書類”とは』へ続く
森 功(ジャーナリスト)