【世界卓球】中国を震撼させた松島輝空の衝撃。世界王者との対戦も「本当に楽しみだった」
◇世界卓球2024(団体戦) 2月16~25日 韓国・釜山 ふたりがコートの両端に立った時、あの分厚い体躯を誇る樊振東が松島輝空より小さく見えたのは気のせいか。 男子準々決勝のトップで、樊振東から1ゲームを先取し、2ゲーム目も6-10のビハインドから10-10に追いついて中国応援団に悲鳴を上げさせた松島。
●男子第2ステージ・準々決勝〈日本 0-3 中国〉 1番:松島輝空 13-11、10-12、10-12、6-11 樊振東 「最初は少し緊張したんですけど、本当に楽しみだった。やってみたら樊振東は強かったですけど、全然チャンスはあるなと改めて感じました」(松島)。初のセンターコートで、トップでの世界チャンピオンとの対戦が「本当に楽しみだった」というのだから、「図太い」のもう一段、二段上を行っている。 国内大会で、これほど気迫と充実感をみなぎらせて試合をする松島を見た記憶は、あまりないかもしれない。会場は底冷えのする寒さだったが、それ以上に試合の緊迫感で背筋がゾクゾクした。 強力なチキータと両ハンドのカウンターで、松島が3ゲーム目に8-4とリードした場面では、一気に持っていきそうな雰囲気があった。少し間合いを取り、ゆっくりとコートを回って歩く松島。しかし、8-5と松島のリードで樊振東が見せた、なりふり構わぬ中陣での連続ドライブに、中国代表としてのプライドがにじみ出た。フロアから数十センチというところのボールを、あれだけ腰を落として打てる脚力はすごい。 樊振東が今の松島の年齢だった頃、世界の檜舞台に彗星のごとくデビュー。台上のどこに来たサービスでもレシーブから全力でチキータし、台上バックドライブの連続攻撃で「ブイブイ」言わせていた頃を思い出した。今や彼は27歳の世界チャンピオンとなり、16歳の松島の挑戦を受ける立場。こうして時代は巡っていく。
一方で、3ゲーム目の終盤、樊振東は何気ないタッチのブロック、あえて弧線の高いバックドライブで松島のミスを誘い、引き出しの多さを見せた。それまで樊振東の強打に対してスーパープレーを連発していた松島にミスが出た。「あと1本が遠かった。1本の重みを今回は感じました」と、試合後の囲み会見で松島はたびたび口にしている。 それでも、「全然チャンスはあるなと改めて感じました」と松島は言う。「チキータは自分でも自信を持っているので、それが通用したのはさらに自信になりましたし、サービスからの3球目も通用すると感じました。相手は世界チャンピオンですけど、その相手に競れたことが自信になりました」(松島)。 「あいつ、本当に怪物になるかもしれないですね」。日本男子の田㔟邦史監督が、決勝トーナメント2回戦のオーストリア戦の囲み会見の終盤にそうつぶやいた。 「SORA MATSUSHIMA」の名前を改めて世界にアピールした今大会。今後はWTTグランドスマッシュや韓国でのWTTチャンピオンズに出場し、世界ランキングを上げることが目標だ。