同意なしの強制不妊手術「40年以上知らなかった」 戦後最大の人権侵害『旧優生保護法』 国を提訴した夫婦が最高裁で初弁論
■約2万5000人が不妊手術 約65%は本人の同意なし
その後、どれだけ願っても、2人目の子どもを授かることはなかった。 その背景にあったのは…「優生保護法」。“戦後最大の人権侵害”と言われる法律。 「不良な子孫の出生を防止する」とうたい、障害のある人たちに対して中絶手術や、子どもを産めなくする不妊手術が推し進められたのだ。 2023年6月に国会が公表した調査報告書によると、およそ2万5千人が不妊手術をされ、そのうち約65%は本人の同意がなかった。 なぜこのような手術がまかり通ったのか。 産婦人科医として、法律が廃止されるまで不妊手術などに携わった医師は、自身が手掛けた手術は「本人の同意を基本としていた」としつつ、こう振り返る。 産婦人科医 堀口貞夫さん(91):本人が同意しているかどうか、分からないままやったことはあった。(保護者が)『本人が分からないうちにやってください』と、『もともと生まれつきできなかったんだと理解できるぐらい、不妊手術をしたと意識ない時期にやりたい』ということもあった。 Q.手術していることに対してはどう思っていた? 産婦人科医 堀口貞夫さん(91):医者としては反対しているけど、追い込まれている状態で手術していますからね。自分の感覚を殺さなきゃならない。なんであんなもの(法律)があったんだろうと思うわけだから、それをやってしまった、やらざるを得なかった自分の弱さ。そう思っていたのに、こっちが何も動かなかったことは申し訳なかったなと思います
■不妊手術について40年以上「知らなかった」
不妊手術は、妻の花子さんにも行われていた。聴覚障害を理由に、帝王切開と同時にされていたのだ。 野村太朗さん(仮名・80代):当時、帝王切開して赤ちゃんが亡くなったということだけしか知らなくて、私たちは同時に不妊手術をされていることすら知らなかったんです。 野村花子さん(仮名・70代):もちろん私も知らなかったし、主人も知らなかったんです。 野村太朗さん(仮名・80代):しばらくたってから『赤ちゃんができない』ということだけ聞いて、亡くなったから2人目が生まれないという意味で言っているのか、なんでなのかなと分からなかった。だいぶたってから、不妊手術をしたということだと分かった。 野村花子さん(仮名・70代):不妊手術しないでそのままの体でいさせてくれていたら2人目も授かったかもしれないのにと思うと、怒りの気持ちが収まりませんでした。不妊手術をされたことを今でも悔しく思っているんです。なぜ不妊手術を受けなくてはならなかったのか。 花子さんがこの事実を知ったのは、手術から40年以上たった2018年。同じように強制不妊手術で苦しむ人が、裁判を起こしたことがきっかけだった。 なぜ子どもを育てる未来を奪われなければならなかったのか…。