平均年齢60歳の町工場、ベテランとZ世代女子の最強タッグで活性化
いつの時代も大人たちは「今の若者は……」と新世代との価値観のギャップを嘆いてきた。だが、「それにしても令和の若手は扱いにくい」と思う人は少なくないのではないだろうか。 「少しでも厳しく接したらパワハラと言われる」 「優しく指導すれば『成長できない』といきなり退職」──。メディアやネットのそんな評判を聞き、戸惑いを感じている人もいるはずだ。それでも、世の中にはそんな〝令和の若者〟をしっかり戦力にしている企業もある。各社の採用、教育、コミュニケーションの仕掛けを紹介する。 【関連画像】2023年入社の森下ななさん(写真/皆木優子) CASE2 佐藤製作所(東京・目黒/金属加工) 町工場のベテラン職人とZ世代女子の最強タッグ 平均年齢約60歳、10年連続赤字の町工場が新卒採用を決断した。男性職人ばかりの職場に飛び込んだのは、Z世代の女性社員。水と油に思える両者はどう協力し、再び会社に活力を与えたのか。 10年連続赤字で、職場の空気は悪い。仕事のミスも多く、製品不良や納期遅延が頻繁に起きる──。10年前には、金属加工会社、佐藤製作所に明るい未来が待っているとはとても思えなかった。 しかし、今は全く違う。2016年に黒字に転換。1社依存から取引先は400社まで増え、売上単価も数千円から数万円まで上昇した。一体、同社に何があったのか。復活の立役者で14年、28歳で父が経営する佐藤製作所に飛び込んだ佐藤修哉常務が打ち出したのは若者、それも女性の採用だった。 「業績も管理もボロボロだった」が、「いつかおまえが継ぐんだぞ」と幼い頃からかわいがってくれた創業者である亡き祖父のためにも、この状況を何とかしたいと考えた。 ●大胆施策に社内は大反発 入社当時、平均年齢約60歳。男性ばかりの職場は会話がない。佐藤常務が孤軍奮闘し、赤字解消のため新規開拓などに励んでも、社長、専務をはじめ社員全員から「うちには売りも強みもないから無理」と一様に否定された。 そこで、停滞した職場の空気を変えるために始めたのが新卒採用だ。それまで佐藤製作所では中途でしか人を採ったことがなかったこともあり、社内は反発。「未経験者には無理な仕事」「誰が面倒を見るのか」「こんな仕事をやりたい人はいない」。後ろ向きな声ばかりが上がった。