「責任ありますね。主役って」俳優生活60年で映画初主演 平泉成「明日を綴る写真館」
「明日を綴る写真館」(秋山純監督)は、平泉成(80)主演の心温まる人間ドラマ。平泉は、いかにも似合いの頑固おやじを演じている。俳優生活60年の大ベテラン。実は映画で主役を張るのは、これが初めてだというから意外だ。「責任、ありますね。主役って」と緊張の面持ちで初主演作を語る。 【画像】映画「明日を綴る写真館」 「『主役』って響きは特別です。あこがれていましたからね」 木村拓哉がモノマネをして大きな話題にもなった、あのハスキーで深みのある声で、しみじみと語る。 昭和39年に大映京都撮影所の新人募集で選ばれ、俳優の道に進んだ。大映は市川雷蔵と勝新太郎が二枚看板だったが、徐々に若手も台頭し、主流がテレビドラマに移ると、さらに若い俳優たちが続々と現れ、ドラマや映画の主役の席を埋めていった。 「その中で、ずっと脇役。60年、一度も映画の主役をやらせてもらえなかった。それでも、いつの日かと思いながらコツコツやってきましたが、もう年だ。年貢の納めどきだと思っていたから、やっぱり、うれしい。ズンと来るものがありますね。平泉成の芝居がまずいから客が入らなかったといわれないよう責任もある」 同名漫画が原作。演じるのは、地方の町で写真館を営む元戦場カメラマンの鮫島武治。若い頃からの趣味で、「キャメラなら自信がある」と二つ返事で引き受けた。 鮫島は頑固な父親で、息子と確執がある。そこに弟子入り志願の気鋭のカメラマン、五十嵐太一が現れる。悩みを抱えた五十嵐を演じるのは、アイドルの佐野晶哉(22)。他にも嘉島陸(25)、田中洸希(21)ら若手が共演する。 「彼らは感性がいい。いい味の芝居をする。孫たちとよく会話をするせいか、若い俳優さんとも苦もなく芝居ができるし、彼らのすごさも分かる」と目を細める。 柔軟だ。若い頃、主演俳優の即興に対応できず出番を減らされたことがある。悔しかった。以来、柔軟であることを心がけている。その後は、NHKのコント番組にレギュラー出演し、話題をさらったほどだ。 一方、佐藤浩市(63)、黒木瞳(63)、高橋克典(59)、田中健(73)ら名優が脇を支えるのも、この映画の大きな魅力だ。鮫島の妻役は、市毛良枝(73)。