『ゴッドランド』に漂う“親密さ”の正体 フリーヌル・パルマソンが明かす撮影のこだわり
北欧のなかでも異質なアイスランドの国民性
ーー本作は時系列順に撮影されたと聞きましたが、それも演出の一貫ですか? パルマソン:はい、この旅を役者やクルーに味わってもらい、その体験が自然に反映されるような形で撮りたかったんです。制作側が撮りたいチャプターにあわせて、役者を無理に押し込むようなことは避けたいと思っていました。 ーー主演のエリオット・クロセット・ホーブさんが、どんどん消耗していく様子が真に迫っていて、恐ろしいほどでした。監督から何か演出をつけたことはありますか? パルマソン:エリオットは、私が映画の構想を練り始めた2013年から関わっていて、脚本も草稿の段階から読んでいるので、プロジェクトと併走するように役作りをしてきました。なので、撮影の段階に入ってから、私自身が彼に対して何か演出をつけるようなことはしていません。ルーカスに関して言えば、彼はもともとミステリアスなキャラクターで、 私にも掴みきれてない部分があったんです。だから、エリオットも実際に撮影を進める中で、ルーカスの人物像をうまく見つけていったんじゃないかと思います。 ーーアイスランドの閉鎖的な雰囲気は、同じ島国として日本にも共通するものを感じました。監督はデンマークとアイスランドの両方に住んでみて、国民性の違いを感じることはありますか? パルマソン:アイスランドは、ほかの北欧の国とは全く違う文化や国民性を持っています。地理的に遠いというのが一番の理由ですが、言語的にもデンマーク人のほとんどがアイスランド語を理解できないぐらいかけ離れています。アイスランドは長くデンマークの支配下にありましたが、どちらかというとノルウェー北部で話されている古いノルウェー語に親近感を覚えることが多いんです。あとは、天候ですね。とても風が強くて、嵐が起きやすいことも、人々の性格に影響しているのではないかと思います。 ーー作中で、デンマークからアイスランドに移住した少女イーダが「右半分はデンマーク人で、左半分はアイスランド人」というようなセリフを言います。これは監督自身のアイデンティティが投影されているのでしょうか? パルマソン:そうですね。イーダは、デンマーク人とアイスランド人のポジティブな面を併せ持った健全な存在として描いています。演じているのは私の娘なので、私自身や娘にこうあってほしいという理想を込めたキャラクターでもあります。
花沢香里奈