あなたのお子さんの保育園は大丈夫? 「ブラック保育園」の定義とは?
国内の保育施設職員は、安全に対する専門教育を受けていない
保育施設を現在利用している保護者の方々は少々驚くかもしれませんが、国内の保育施設で働いている職員は、安全に対する専門教育を受けていません。保育士も幼稚園教諭も国家資格を保有した専門職として保育施設で働いています。子どもの健康状態の把握や保健・衛生面の管理などは習得しますが、保育施設ではどのような事故が発生しており、それらに対応する安全策として、どのようなことを施さなければならないのかなどは習得していません。 2011年7月に神奈川県の幼稚園で起きた3歳男児の死亡事故で、当時園児たちのプール活動の監視を任されていたのは新任の幼稚園教諭でした。事故後、刑事事件の被告として立った裁判所の証言台で彼女は、 「安全に関する教育は学校でも習わなかったし、勤務が始まってからも幼稚園で習ったこともなかった」と証言しています。保育士や幼稚園教諭を養成する学校のカリキュラムに「危機管理」という科目が入っていない以上、職員に対する安全教育は施設の役割であり、責任でもあります。つまり、職員への正しい安全教育を施設がきっちりと行わない限り、その施設は永遠にブラックの状態から抜け出すことはないのです。 私は保育施設の事故現場で13年間働いてきました。自分の目で事故現場を見て、自分の耳で被害者の話も加害者の話も聞いてきました。その経験から言えることは、保育現場の事故原因のほとんどは”人”にあるということです。 職員の安全管理能力として「事故の知識」が頭の中に入っているか。一日の流れや年中行事の中で「事故に対する意識」を上げたり下げたりすることができるか。職員同士で安全のための「コミュニケーション」が必要量なされているか。という3点に対して、各施設がどのような指導・教育・訓練を職員に対して実施しているのかが事故の大小や発生率に直結すると考えられるのです。人間の意識は長期間維持できないので、少なくとも1年に1回程度は安全に対する職員研修を実施し、安全に関し決められたルールは現場で守られるようにする必要があるのです。 (株式会社アイギス代表取締役社長・脇貴志) 社会福祉法人・学校法人の事故やトラブル対応アドバイザーサービスを展開。著作に『事故と事件が多発するブラック保育園のリアル』(幻冬舎)がある。