「ばあちゃんの店守る」 七尾・スター美容室の石崎さん コンテナハウスで再起
●郊外へ移転 七尾市一本杉通り近くにあり、能登半島地震で被災した創業60年の「スター美容室」が郊外に移転し、コンテナハウスで営業を再開させた。地震で傾いた建物で再出発は難しく、11年前に祖母から美容室を継いだ石崎拓さん(40)が新天地での再起を決断した。「地域でキラリと光る星のような存在に」と命名された店。場所が変わり狭くもなったが「ばあちゃんの美容店」を守ろうとはさみを握る。 【写真】再開させた美容室が入るコンテナハウス 七尾市阿良町に店を構えていたスター美容室は、石崎さんの祖母・山口千里さんが60年ほど前に開業した。七尾工高(現七尾東雲高)を卒業後、石川県内の美容室で技を磨いてきた石崎さんが2013年、体調を崩していた祖母からバトンを引き継いだ。 元日の地震で祖母との思い出が残る店には無数の亀裂が入り、外壁が粉々に崩れた。器具が散らばった床は足の踏み場がなく、玄関はゆがみ、ジャッキやバールを使って中に入れたのは1月3日だった。 建物は半壊と判定され、公費解体の予定で、石崎さんは同市古府町にある理容店の一角を間借りして常連の髪を切る生活を続けた。出店場所を探したが見つからず、6月に万行町の空きスペースにコンテナハウスを設け、再起を図ることを決断した。設置費は国の補助金を活用した。 祖母は再開準備を見届けるように10月11日に90歳で亡くなり、石崎さんはちょうど1カ月後の11月11日に新しい店舗で営業を始めた。石崎さんは「ばあちゃんの店はなくなってしまったが、名前を残せた。ばあちゃんも頑張れと言ってくれているだろう」と話し、はさみをシャキシャキと小気味よく動かした。