髙橋藍「金メダルをイメージするために...」 ネーションズリーグで見せた「負けず嫌い」の真骨頂
【イタリアで受けた刺激】 そう髙橋は言う。今シーズンは世界最高峰、イタリアのセリエAで優勝プレーオフを主力として戦い、栄えある決勝を戦った。その実績は伊達ではない。 「(2年半プレーした)イタリア人の性格は刺激になりました。彼らは明るくてポジティブ。試合に負けた時も、そういう日だってあるよ、って感じで、次の日から切り替えていこう、って。そういう選手が多かったので、自分も影響を受けました。彼らは練習、試合と楽しんでやるので、それはすごく大事な要素だな、と感じましたね。日本だと、いろんな周りからの見方とかを、気にする文化があるなって思うので。イタリアでは、自分は自分、自分がやりたいようにやるって感じなのも違っていて、自分としても前向き、ポジティブになったと思いますね」 一方でイタリア人は勝負にこだわるし、アクも強い。 「イタリア人は、自分たちのことを誇りに思っています。自分たちのことが大好きですから(笑)。イタリアの食事にしても、一番だと思っていますからね」 イタリアの気風は合っていたのかもしれない。負けず嫌いを極めてきた。そこで今年5月のインタビューで、こんな質問を投げたことがあった。 ――パリオリンピックではメダルを待望する声も多いです。どのような気持ちで臨むつもりですか? 髙橋は流れるような口調でこう答えていた。 「現時点で、オリンピックの位置づけはメダル獲得なんですけど、チームでミーティングした時には『金メダル』と言う選手もいるし、いろんな意見があって......僕のなかでは、正直に言うと、金メダルのイメージはまだ持てていません。それは、今の日本代表が(世界トップレベルの大会で)決勝に行ったことはないから。世界大会では3位決定戦は、去年のネーションズリーグで経験できたので、そこ(銅メダル)へのイメージはあるかなって」 彼はそう言って言葉を継いだ。 「(日本は)決勝には行っていません。(世界で1、2を争う)アメリカ、ポーランドには勝っていない。だから、そこを倒せるイメージを自分は持てていないので、今の段階で僕のオリンピックの位置づけは『メダル獲得』になっているんですよ。けど、オリンピックの前にネーションズリーグがあるので、まずはそこでの目標を『決勝に行く』に設定しています。決勝を経験できた段階で、『オリンピックで金メダル』っていう目標が作れるんじゃないかなって」
人並外れた負けず嫌いは、勝つ見込みに対してシビアだ。 ネーションズリーグの福岡ラウンドは、イラン、ドイツに連勝後、ポーランドにはストレートで敗れたが(髙橋、石川、西田、関田などは出場していない)、スロベニアには第3セットに髙橋がデュースを競り勝つスパイクを決め26-24とし、3-1で勝利を飾った。3勝1敗とした日本は5位で次のフィリピンでのラウンドへ向かう。決勝大会は6月下旬、ポーランドで開催される。 自他ともに認める負けず嫌い。髙橋はパリにつながる戦いに虎視眈々だ。
小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki