Swift適応のステーブルコイン国際送金基盤の構築へ、プログマとデータチェーンがTOKI・IBC等活用で
Swift適応のステーブルコインの国際送金基盤の構築へ
Progmat(プログマ)社およびDatachain(データチェーン)が、ステーブルコイン(SC)のクロスボーダー送金基盤構築に向けた共同プロジェクト「Project Pax」の開始を9月4日に分かった。 同プロジェクトでは、Progmat社とDatachainが連携し、Swift(国際銀行間通信協会) のAPI モック/シミュレーション環境に適応したSCのクロスボーダー送金基盤の構築に取り組むとのこと。 Swiftの既存のAPIフレームワークを用いた銀行経由のステーブルコイン送金は、AML/CFT、規制対応、オペレーション構築に加えて、企業によるウォレット利用のハードルなどの観点から行われるという。 「Project Pax」によるプロトタイプを用いた開始予定の実証実験には、国内外の主要金融機関の関与が既に決定しており、より多くの国・金融機関へと連携を拡大しながら、2025年の商用化を目指すとのこと。なお金融機関名は順次公表する予定とのことだ。 「あたらしい経済」編集部に共有されたプレスリリースによると「Project Pax」のクロスボーダー送金基盤は、初期段階から国内外の金融機関のレビュープロセスを踏んだうえで、ブロックチェーン上のSC送金を可能にするとともに、複数の異なるブロックチェーンに跨るSC送金や、既に発行済みの既存SCへ変換したうえでの送金等、グローバルスタンダードとなる汎用的な機能を実装するとのこと。 なおブロックチェーンを跨るクロスチェーン取引については、ブロックチェーン間通信プロトコルの「IBC」及びDatachainが開発をリードするミドルウェア「LCP」、Progmat 社とDatachainが共同開発したSCコントラクト、そしてクロスチェーンインフラを提供するTOKIの流動性プールを活用するとのことだ。 ちなみにIBCとは、コスモス(Cosmos)エコシステム内のプロジェクトによって策定されたブロックチェーン同士を相互運用する為の標準仕様である。これを採用することでブロックチェーンを跨いだトークン転送などのデータ通信が可能になる。 また「LCP(Light Client Proxy)」とは、ブロックチェーンのインターオペラビリティ(相互運用性)やクロスチェーンブリッジの現状課題解決のためのミドルウェア。クロスチェーンブリッジにおいて最も安全なクロスチェーン手法とされる「Light Client方式」の課題である「拡張性の低さと検証コストの高さ」をTEE(Trusted Execution Environment)を用いたProxyにより解決したソリューションとのこと。TEEとは、ICカードのセキュリティ等の標準技術の策定を行う非営利組織GlobalPlatformが定める技術仕様のひとつで、プロセッサーを通常の実行環境と安全な実行環境に分割することによって、アプリケーションの安全な実行環境を物理的に確保するセキュリティ技術である。 TOKIでは9月2日、IBCにTEEと暗号技術のゼロ知識証明(zero knowledge proof:zkp)を組み合わせたクロスチェーンブリッジプロトコルのテストネットを公開している。同プロトコルでは、シームレスな1クリックのネイティブトークンスワップを可能にする片側統合流動性プールを備えた、イーサリアム(Ethereum)とBNBチェーン間の最初のIBC接続を提供する。 「あたらしい経済」編集部がProgmat社のCEOである齊藤達哉氏に取材したところ、複数の中継銀行を経由した現在の国際送金は円滑に送金できる場合でも数十分程度、マネロン対策情報の不備などがあると1カ月程度かかることがあるという、今回の「Project Pax」によるクロスボーダー送金基盤では、銀行間の通信はSwiftのネットワークを活用し、ブロックチェーン上のステーブルコインを用いて銀行間で直接送金するため、着金までの時間は理論上数秒~数分以内になるとのこと。 また同氏によると同基盤は、既存インフラのSwiftを活用するため、金融機関は新たなシステムを構築する必要がなく、投資額を抑えられるという。 その他にも同基盤では、企業や個人もステーブルコインの保有や管理をする必要はなく、銀行に送金指図をするという従来通りの手続きで送金が可能であるとのことで、企業や個人が支払うコストは為替手数料とブロックチェーン基盤の利用料のみとのこと。さらに手数料が高くなりやすい新興国向けの場合、送金コストは従来の1割以下になる可能性があるとのことだ。
大津賀新也(幻冬舎 あたらしい経済)