もはやスパイの暗号文! ポケベルの文字入力文化【山下メロの平成レトロ遺産:031】
記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。今回はポケベルの文字入力について掘り返していきましょう。 【写真】今週のレトロ遺産! 90年代初頭のポケベルは対応する番号に電話することで、ポケベルに合図を送る手段でした。その後、本体には任意の数字を表示できるように進化。 例えば、電話から「084」をダイヤルすると、ポケベルに「084」と表示され、その語呂合わせから「084→オハヨー」と解読する形で、若者がポケベルを使ってコミュニケーションするようになっていきます。 この語呂合わせ以外の暗号として五十音図方式もありました。これは子音と母音にそれぞれ番号が対応して、「11」で「あ」、「12」で「い」、「23」で「く」のように2桁で一文字を意味します。 例えば、語呂合わせで「愛してる」と送るなら「1=アイ、4=シ、10=テ、6=ル」の「14106」だけで済みます。 一方、五十音図方式だと「1112324493」と長くなります。慣れるまでは、暗号表を見ながらダイヤルし、受信側も暗号表を見て解読しなくてはなりません。さらに、お互いが同じ暗号表を所持する必要もあり、短文送信でも複雑すぎて普及しませんでした。 しかし、後年その解読をポケベル本体がやってくれるようになります。最初に「*2*2」とプッシュ後「1112324493」と入力すると、ポケベルには「アイシテル」と表示されるように。 変換ルールは公式で決まっているため、暗号表を交換する必要もありません。これによりポケベルでのコミュニケーションのハードルが下がり、より若者に普及したのです。 当時はこれらの使い方を伝えるため、自分のポケベル番号(ベル番)を書く欄と、送信方法、そして暗号表が書いてあるカードをキャリアが無料で配布しました。これを名刺代わりに配るのが定番だったのです。 公式の暗号なので、知らないベル番に「ベルトモナロウ」と送ってベル友探しができたのも特徴です。風船につけた手紙、ガラス瓶に入れた手紙で文通相手を探すようなロマンが生まれました。 撮影/榊 智朗