禁制を破った熱血女子(7月4日)
福島、山形、新潟の3県にまたがる飯豊山(2105メートル)は、信仰の山として知られる。今でこそ女性登山者の姿は珍しくないが、古くは女人禁制だった。入山した女性は石にされたと「姥権現[うばごんげん]」の伝説にある▼古来のおきては、1915(大正4)年9月1日に破られた。今の会津若松市北会津町の猪俣竹緒[たけお]が、女性として初めて頂上に立った。会津高等女学校(現葵高)を卒業したばかりの熱血女子だった。「会津坂下町の伝説と史話」(井関敬嗣著)が紹介している▼「佐渡島の見物に行く」と家族に偽り、麓の一ノ戸村(現喜多方市山都町)に向かった。山の神の怒りを恐れる村人に足止めされたものの、熱意が認められたのか。案内してもらい、登頂することができた。帰宅後、激怒した父親から勘当を言い渡されるも、伯母がとりなし、謹慎で済んだとの後日談も残る▼さて、その飯豊山は、本格的な登山シーズンを迎えた。川入と弥平四郎の登山口では、6日に山開きがある。現在の女性活躍社会を先取りしたような、100年以上前の出来事に思いをはせ、一歩一歩登ってみよう。神様も、大きな心で迎えてくれるはずだ。もはや、誰も石にされることはない。<2024・7・4>