ワインづくりに変化の波 「再生型農業」の成功の鍵とは
土壌と炭素のつながりとは何か
土壌の質はまた、養分の循環や有機物の貯蔵にも影響を及ぼし、地上の要因も全て浸食に影響するため、養分がさらに枯渇。こうしたことにより、ブドウの木は大雨や土砂崩れなどの悪天候の被害を受けやすくなります。 健全な土壌には、保水力が不可欠です。この能力を高める2つの重要な要因は、粘土質の土壌と土壌有機物。有機土壌物質が1%増えるだけで、土壌は1エーカーあたり約6万8000リットルの水を余分に保持できるようになります。気候変動によって気温が上昇することで、水不足が深刻化し、干ばつが頻発・持続するようになれば、保水力はますます重要になってくるでしょう。 被覆作物や樹木を植え付け、有益な昆虫や動物を導入し、生物多様性を高めることで生まれるのが、「生態系サービス」です。生態系サービスは、肥料の代わりに窒素を固定し、保水力を高め、土壌浸食を防ぎ、土壌病原菌の抑制やブドウの木の害虫の駆除に役立つ昆虫や鳥を呼び寄せたりすることで、ブドウの木とその周囲に恩恵をもたらします。 土壌と炭素のつながりを理解する先に述べた菌根ネットワークの役割については、包括的な研究が待たれるものの、陸上炭素の75%は地下に貯蔵されていると考えられています。様々な推定値が存在し、ある程度の誤差はあるかもしれませんが、ある研究の概算によると、陸上植物は13.12ギガトンの二酸化炭素を固定。これは化石燃料による現在の年間二酸化炭素排出量の約36%に相当します。さらに、植物の光合成によって固定された炭素の10%から40%は根から放出されているのです。 別の研究では、アグロフォレストリー、カバークロップ、マメ科カバークロップ、動物との共生、非化学肥料、非化学的害虫管理、不耕起という7つの再生型農法について、345の土壌炭素貯留量を分析。7つの方法すべてが炭素吸収量を増加させ、最も効果的で導入しやすかったのは、カバークロップ、不耕起、非化学的害虫管理であることがわかりました。これらを組み合わせることで、さらに吸収量が増える可能性もあります。 再生連合の構築再生型農法が勢いを増す中、経済的に実現可能でありながら、スケーラブルな方法で実質的な違いを示すことが成功への鍵となっています。 経済的な面においての初期観測は有望です。再生可能な手法への先行投資などにより、農業コストは増えるかもしれません。その一方で、生産者たちは、収量が増え、ブドウの品質が向上する可能性も認めています。