<春へ一丸・’23センバツ慶応>/下 「非公式戦」で磨く心 ベンチ外の気持ち理解 /神奈川
慶応が積極的に取り組んでいる一つに非公式戦リーグ「リーガ・アグレシーバ」がある。高校野球の公式戦はトーナメント形式がほとんどで、勝つために特定のメンバーが出場しがちだ。公式戦メンバーに入れなかった選手たちの出場機会確保という役割も担った。 リーガの発祥は大阪で、その後、全国各地に広まった。県内では慶応が呼び掛け、昨年8月からスタート。現在は桜丘や大和など県内12校が参加している。高校生たちの将来を重視し、けが予防のために投手に1日75球の球数制限を設け、大学野球を見据えて木製バットなどを使用するルールがある。 慶応は2年生約40人のうち、秋の公式戦メンバー外の約25人が試合に出場した。「背番号をつけたことで、自分もチームの一員だという自覚が芽生えた」「スタメンが背負う責任を感じた」という声が聞かれた。 一方、公式戦メンバーはランナーコーチなどのサポートに回り、試合に出られないもどかしさを味わった。大村昊澄(そらと)主将(2年)は「試合に出たくてうずうずした。出られない人はこんな気持ちなのかと思った。ベンチメンバーに入る責任を感じた」と振り返る。森林貴彦監督(49)も「スタメンとそうでない選手、お互いにとって良い機会になった」と語る。 リーガ開催による別の効果もあった。リーグ戦のため負けても次がある。アウトを恐れずに初球からスイングするなど、選手たちの積極性が引き出された。 リーガ出場者から公式戦メンバーに入った選手は、まだいない。ただ部員がそれぞれの立場を理解したことで、ベンチ入りしても、スタンドに回ることになっても、チーム一丸となって春の大舞台を目指す。(この連載は田中綾乃が担当しました)