中国・低空事業で変わる江南の水郷の景色
【東方新報】中国・浙江省(Zhejiang)を流れる銭塘江(Qiantangjiang)のほとりからB-7508ヘリコプターが離陸した。視界に広がるのは遮るもののない広々とした川面の景色だ。 乗客の李(Li)さんは「ヘリコプターに乗るのは初めてですが、とても安定感があります。100メートル上空から眺める銭塘江は、地上で眺めるよりさらに壮観です」と興奮気味に話す。これは同省の海寧市(Haining)が立ち上げた低空観光ツアーである。 ヘリコプターは海岸線に沿って東に向かって進んだ。窓からは、長い時を経た生命の通り道が、緑豊かな自然の壁となって江岸を彩っているのが見える。 そして3分後、杭州湾(Hanzhouwan)の海水が満潮時に銭塘江に向かって逆流してくる「海嘯(かいしょう)」を最もよく眺められる場所「海寧・塩官観潮景勝地」に到着した。そこは、古い街並みや宋時代の7層建ての塔「占鼇塔(せんごうとう)」、清の皇帝が「海嘯」を鑑賞した展望台「白石壇(Baishitan)広場」などが一望できる場所だ。 飛行距離は36キロ、車で移動すると1時間近くかかるが、ヘリコプターなら12分ほどで到着する。 年配の世代には、かつて小船で杭嘉湖(Hangjiahu)平野の複雑に入り組んだ水路を、ゆらゆらと進んでいく船旅の記憶は、まだ鮮明に残っている。 それが今では、飛行機に乗って銭塘江の壮大な波の上を飛び、のどかな古い町並みや小さな橋、水の流れを見下ろし、広大な太湖(Taihu)の南岸一帯を探索できるようになった。 90年代生まれのパイロット、陳凱(Chen Kai)さんは、浙江省平湖市(Pinghu)の飛行基地で特別講師を務めている。彼の「教室」は空の上だ。 飛行理論を説明し、飛行装備の装着方法を指導し、飛行前の安全検査を行う。準備が全て出来たら、飛行体験にやってきた訓練生たちを、長江デルタの美しい景色が広がる浙江省と上海市の境界線上空に連れて行く。 陳さんは「たくさんの地元の人たちが見慣れた土地を副操縦士の座席から見渡して、飛行の魅力を体験できるようになりました」と話す。陳さんたちは、訓練生の飛行中の緊張を和らげるため「美しい名所の景色鑑賞方式」という独自の訓練スタイルを考案した。訓練生が空中から地元のランドマークとなる観光名所を見つけるという指導法を取り入れている。 国慶節の連休中、浙江省湖州市(Huzhou)の呉興地区(Wuxing)でも「飛行熱」が盛り上がった。地元の村から飛び立ったリコプターが、何キロメートルにもわたり延々と続く海岸線、青い空、緑の大地、澄んだ水、美しい景色の上空を悠々と飛行する。 ヘリコプターに乗った観光客たちは、スマホを掲げ、写真やビデオを撮影している。 飛行基地の責任者・洪(Hong)さんは、お客の多様なニーズに応えるため、「ムーンベイコース」「ポート往復コース」「太湖南岸コース」の3つのコースを開設した。 洪さんの話によると、現在この飛行基地ではヘリコプターの訓練や教育、飛行体験、親子研修、フライトチーム結成など、様々なサービスプロジェクトも提供している。 さらに、将来的には上海市や湖州市の人気の観光地・安吉県(Anji)、莫干山(Moganshan)、千島湖(Qiandaohu)などへの低空高速路線の開設を計画中だ。 今、低空事業は大きな盛り上がりを見せている。 ドローンも農業や林業用途、電力設備点検などに幅広く利用され「村の守護神」となっている。また、緊急救助や気象観測にも使われ「有能な助手」の役割を果たしている。 空飛ぶ「タクシー」は効率的な移動を助け、航空物流は隅々まで行き届いている。 「空の道路」を建設することで、江南地方(Jiangnan)の水郷の無限の開発空間をさらに広げることができる。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。